アイマスク体験は慎重に!!

掲載日:2009年10月30日

「見える人が、アイマスクをして歩いてみる」ということは、視覚障害者の本質的理解につながりにくいことと考えられます。

人が外界から収集する情報の80%は視覚から得ると言われています。

視覚障害者が外界から得られる情報はこの残りの20%です。

アイマスク体験では、80%の情報を失った怖さを体験するのではなく、視覚以外から得られる20%の情報を活用する体験をすることをおすすめします。

人は何か動作をするとき、その動きに必要な情報が十分に得られないと、不安を感じながら行うことになります。情報が足りないまま動作をすることは「とても怖い」と感じます。

「アイマスク体験」というと、「アイマスクをつけての歩行」を行っているところが多くあります。

 右手左足、左手右足を交互に出すことが「歩行」と考えていませんか?

 視覚障害者は歩けるのだから、「視覚障害者を理解するためには、アイマスクで視覚遮断をして歩けば分かる」と考えていませんか?

 見えている人は、足を交互に出しているだけで歩いているわけではありません。

今歩いているところは、歩道なのか車道との区別がない道なのか、どれだけの道幅があるのか、その道幅のどのあたりを歩いているのか、電信柱やポールがどこにどの間隔であるのか、どんな人がどの方向に何人ぐらいどんなスピードで歩いているのかなどなど大量の情報を、気付かないままに入手して気付かないままに処理して歩いているのです。

見えている人がアイマスクをつけることにより、外界から得られる視覚情報の80%を遮断される。その慣れない環境の中で、今まで気付かないまま処理してきた情報に気付き、それを有効に利用できるほど「アイマスク歩行」は簡単なものではないと考えられます。

次のような感想がでるのも、「アイマスク歩行」を簡単なものと考え、実施した結果と考えます。

ある小学校でのアイマスク歩行体験の感想より抜粋

  • アイマスクをすると、隣で友達が誘導してくれていても、ちょっとしたエンジン音でも驚いてしまいます。
  • 目が見えないと、本当に怖かったです。 車にひかれそうだし転びそうだし。目が見えないということは、本当に恐いことだと思いました。
  • 目の前の何かにぶつかりそうな気がして、空中で手を動かして確認しないと前に進めませんでした。
  • 誘導するときには細かいところまで知らせなければならないので、思ったより大変でした。

 視覚障害者は、視覚情報不足の中で日常生活を送っています。

結果、視覚以外の情報を有効に使えるようになります。それにより、視覚障害者は誘導者と一緒に歩くだけで多くの情報を得ることができるのです。

これは、見える人がアイマスクをして視覚を遮断された状態とはちがいます。

見える人がアイマスクをして歩くというのは、情報のない外国に突然投げ込まれたと同じことです。

不安で当たり前です。怖くて当たり前です。 不便で当たり前です。

あなたは、突然知らない外国に投げ込まれたとして、自分のことをかわいそうと思いますか?

周りを理解する情報が欲しいとは思っても、自分のことをかわいそうとは思わないと思います。

視覚障害者も同じです。 欲しいのは、情報です。同情ではありません。

ですので、「アイマスク体験」では怖かったり不便だったりする体験をすることでなく、「視覚以外から情報を得る」という体験をしてみることが大切です。

見える人がいきなりアイマスクをして歩くことは、

「見えないと怖い→何もできない」→「見えない人はかわいそう」

そしてこの先には「自分は見えていてよかった」という気持ちから見えない人へ の「哀れみの差別感」を呼び起こし、助長してしまう危険性があると考えられます。

 このような「見えないと怖くて何もできない」という体験をしたこどもが、

万が一将来失明するようなことがあったとき、

「学校でアイマスク体験をしたときには怖くて何もできなかった。見えなくなった自分はもう何もできない。ずっと怖い世界にいるのだ。もう絶望だ!」

そして、もし、「見えていて良かった」とかつて思っていたとしたら、「見えなくなった自分」を受け入れることが難しく、生きることに悲観的になってしまうかもしれません。

しかし、「視覚以外の情報を活用する」体験をした人ならば、「見えなくてもできることはある。足りない情報が補われれば、いろいろとわかる」と希望が持てます。

視覚障害者を誘導する体験はとても大切なことですが、

[基本的にはアイマスクをした見える人を誘導する体験は必要ないと考えています。]

なぜなら、誘導する人も誘導される人も経験という情報不足からくる不安の中で

「怖い」と思いながらの体験になるからです。

どうしても、見える人がアイマスクをつけての誘導体験が必要なときは、必ず本会の講師等に相談してください。

そして、なぜ次のように感じたのか、どうすれば、そう思わないようにすることができるのか、考え、答えを見つけてから実践するようにすることをおすすめします。

(ヒントは、「」の中の言葉)

  • アイマスクをすると、隣で友達が誘導してくれていても、「ちょっとしたエンジン音でも驚いてしまいます。」
  • 目が見えないと、本当に怖かったです。  「車にひかれそう」だし「転びそうだし」。目が見えないということは、本当に恐いことだと思いました。
  • 「目の前の何かにぶつかりそうな気がして」、「空中で手を動かしたりして」確認しないと前に進めませんでした。

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