馬渡藤雄

1.一般事務職採用試験(点字)

1980年頃雇用を進める会が、県に対し一般事務職採用試験を点字で受験できるようにと要望したところ、県は「別に、拒否しているわけではない、希望者があれば実施する。」と答えた。

そして、1982年、中級職に点字で受験した全盲者が合格し、労働部に採用された。

当時、点字による採用試験を実施している地方自治体は、東京都の福祉職Cおよび和歌山県のみであった。

1991年、国家公務員行政職Ⅰ種およびⅡ種(上級職、中級職)採用試験に点字受験が認められて以来、徐々に地方自治体に波及し、今日では北海道、宮城県、東京都および23区、京都府、大阪府、大阪市、福岡県等で実施されている。

神奈川県では、1982年の採用につづき1985年に弱視者が拡大読書機を用いて、中級職に合格採用され、更に1990年と1991年に全盲者が点字受験し、それぞれ上級職に合格採用された。結局、神奈川県では過去16年間に4名の視覚障害者が合格、採用されたにとどまっている。一般事務職が狭き門であることは否めない。

県当局は、障害者の処遇について、異動と昇進管理に苦心しているといっているが、現在、前記の人たちは、農政部農水産課、出納庁出納施設課、都市部整備課、福祉部健康保険課の職場に配置されている。一般に県職員は2、3年で異動しているが、障害者は4、5年で異動させている。いわゆる、障害者だからといって福祉関係職場に限定しない人事は、高く評価してもよいのではないかと思う。

なお、県教育委員会は、中・高校教員の採用試験も点字受験を認めているが、未だに1名の合格者も出していない。

2.障害者特別枠(身体障害者を対象とする神奈川県職員)採用制度

神奈川県が特別枠採用制度を発足させたのは、国際障害者年の始まりの年、1981年であった。10年間で知事部局職員の3%を雇用すると目標を設定した。

翌1982年、横浜市も20年間で4%の障害者を雇用するとして、特別枠採用制度を発足させ、同じく川崎市も10年間で3%を雇用する制度を発足させた。

神奈川県、横浜市、川崎市のいずれも今日では、目標をほぼ達成している。

しかし、ここで考えなければならないことは、障害者特別枠採用制度が出来たからといって、視覚障害者が採用されるとは限らない。否「活字に対応できるもの」という条件を設け、重度視覚障害者を排除する例が普通に行われていることを認識しなければならない。

本会は、県に対し常に新たな職種を掲げてその採用を要望してきた。すなわち、電話交換手、福祉相談員、録音タイピスト(ワープロ速記者)、ヘルスキーパー、病院マッサージ師、はり・きゅう師、特別養護老人ホームマッサージ師、障害者施設マッサージ師、老人保養所マッサージ師、点訳指導員、一般事務職、図書館職員等々である。その大部分が、県の受け入るところとなり採用が実現した。我々が、具体的な職種を示して理解を求め要望した結果、神奈川県、横浜市、川崎市、県の外郭団体等に約70名の視覚障害者が雇用されている。

ところで、特別枠採用制度にも、いくつかの問題点がある。我々は、その解決に向けて県当局と粘り強く交渉を重ねてきた。

(1)居住制限

これは当局が、住民への利益還元を主張するための制限であるが、職種によっては、これをはずさないと良い人材が得られない場合がある。

(2)年齢制限

現在は事務職30歳、電話交換手やマッサージ師のような技能職については39歳までに引き上げさせた。

(3)非常勤採用

我々は、障害者の雇用促進といっても不安定な身分を求めているわけではない。そこで、非常勤採用の録音タイピスト、福祉相談員、養護学校ヘルスキーパーについては、常勤化させることができた。しかし、点訳指導員については未解決である。横浜市のワープロ速記者と、特別養護老人ホームマッサージ師については、当局が業務量が少ないといって頑強に常勤化を阻止している。

(4)初任給格差

特別枠採用者は、一般公募の採用者より1号下位からスタートしていた。我々は、長年、その是正を県に要望してきた。その結果、1998年から一般公募採用者と同様に格付けされることになった。