馬渡藤雄

この事業は、中途視覚障害者で盲学校等であはき(あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう)を学ぶ学生に月額4万5千円を貸し付ける、いわば一種の奨学金制度である。しかも、卒業後あはき師(あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師)の免許を取得すれば、返還が免除される特典付きである。
盲学校等とは、神奈川県民で盲学校の学生はもちろん、視障センターの入所生や、はり・きゅうの専門学校の在校生を対象とするのである。 そもそも、この事業は1979年頃、神奈川県立平塚盲学校専攻科理療科に在学中の一学生の素朴な疑問から始まった。それは「中途障害者で職業訓練校(現:職業能力開発校)の訓練を受ける者には、月額10万円以上の訓練手当てが支給されるのに反し、同様に盲学校で、あはきの職業訓練を受けているのになんらの手当ても出ていないことはおかしい。国が駄目なら、県の単独事業で救済して欲しい。」というのである。
雇用を進める会は、これを県との交渉課題にのせ、交渉を重ねた結果、1981年度から月額3万円が貸し付けられることになった。しかし、生活保護世帯には収入と認定され、保護費が削減されるので意味をなさない。それで本会は、再三再四、収入認定しないようにと要望したが、いまだに解決をみていない。
また、金額についても、職業訓練手当とは比較にならない低額なので、以後、一貫して増額を要望してきた。県は職業訓練手当の増額に連動して引き上げてきた。すなわち、

1981年  3万円

1983年  3万3千円

1986年  3万6千円

1989年  3万9千円

1992年  4万3千円

1995年  4万5千円

そして、1996年、県は、印紙税に見合う3千円を就労支度金として、最終貸付時に加算することとなった。