ユニバーサルデザインとは、
調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲ですべての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計のことです。
デザイン対象を特定の人に限定していません。
ノースカロライナ州立大学のユニバーサルデザインセンター所長であった、ロナルド・メイスが1985年に公式に提唱した概念です。
考え方のポイント
一つのものを最大限の人が使えるようにと目指すことも大切ですが、全ての人が完璧に使えるものを作るのはほぼ不可能です。
そこで、より多くの人が自分の状況に合わせて「使えるという実質」を確保できるようにしておくことがポイントです。
★選べる手段を複数用意すること
例えば、垂直移動設備では、
エレベーター・エスカレーター・階段といった様々な手段が用意されていて、利用者が自分の状況に合わせて選べるようになっていることです。
情報においても同じことです。
★支援技術を付加できる仕組みにしておくこと
一人一人の状況に応じて、より使いやすくできるように支援技術を付加できる仕組みをその製品に付けておくことです。
例えば、最初から音声読み上げ機能が付加されているスマートフォンでは、
目の見えない・見えにくい人にも障害がとても少ないので、情報が伝わりやすいですが、
点字ディスプレイとの接続のしくみがあることで、目が見えなくて聞くことも難しい人にも障害が少なくなり、情報が伝わりやすくなります。
また、聞くことよりも点字で読む方が、より文章の理解が進む人にとっても便利です。
具体的なユニバーサルデザインの例
○ 手が不自由な人向けの開発だった温水洗浄便座
○ 手が不自由な人向けの開発だった水道コックやドアノブ
以前のドアノブや水道コックは回すタイプが多かったです
今はこれらのように押すタイプが増え、さらにセンサーで自動で作動する物が増えてきました
○ 日本語の文字から情報を得ることが難しい外国人などのために、文字の代わりに絵文字(ピクトグラム)を使って、各種の情報提供ができます。
○ 見えない人が文字を書くための開発だったタイプライター(現在のパソコンのキーボード)
○ パソコンの画面表示を見やすく工夫する
音声での出力に配慮した画面表示、構成にする。
→Webアクセシビリティー
○ 「安全」に配慮された自動ドア、エレベータのドア、ホームドアなど
○ 頭を洗っているときは目をつぶっているので、シャンプーのボトルに印をつけ、リンスその他のボトルと区別する。
ユニバーサルデザインの7原則
(The Center for Universal Design, NC State Universityによる原文)
① どんな人でも公平に使えること
② 使う上で自由度が高いこと
③ 使い方が簡単で、すぐに分かること
④ 必要な情報がすぐに分かること
⑤ うっかりミスが危険につながらないこと
⑥ 身体への負担がかかりづらいこと(弱い力でも使えること)
⑦ 接近や利用するための十分な大きさと空間を確保すること
○ ビックリ ご存知でしたか?
初めはバリアフリー製品として作られたものが、誰にでも使いやすい・快適なものなので、そのデザインが社会に定着したものが多くあります。
○パソコンのキーボードは、視覚障害者が活字を書くために考案されたタイプライターが応用されています。
○温水洗浄便座は、手が不自由な人がトイレで困らないようにと作られたものです。
○レバー式ドアノブや水道コックは、手の力が弱い人も容易に操作できるしくみとして考えられました。
社会のしくみを作るのは「人」
様々なからだの状況の人に快適なものは、健常者にとっても快適なものになることに気づかれた人も多いと思います。製品やサービスといった社会のしくみを作るのは「人」です。
人の意識に、初めから最大限の人に配慮がある、つまり発想の根本がユニバーサルデザインであることで社会に障害を作らない、あったらなくすことに繋がるのです。
人の能力や個性は一人一人違います。同じ人は誰一人としていませんし、同じ一人の人でも年齢や環境の変化などで、絶えず心身機能は変化しています。
ですので、心身機能の障害(impairment)の有無や年齢といった、個人の属性や置かれた状況に関わらず、だれもが自立し、互いの人格や個性を尊重し支え合い、社会の活動に参加し、社会の担い手として生活を送ることができる、共生社会の実現に向けた社会環境を整備していくことが重要です。
あらゆる人々が社会生活をしていく上で、障害(バリア)となるものを無くしていくとともに、新たに障害(バリア)を作らないことが重要です。
物理的な障壁のみでなく、制度的、文化・情報的、心理的、今までにつくりだされてきた全ての既存障壁を無くしていくこと(社会的障壁(障害)の除去)とともに、
新たに障害を生じさせないよう、最大限の多くの人にとって利用しやすくデザインする、という考え方(ユニバーサルデザイン)が必要です。