携帯電話アンケート調査報告 慶應義塾大学 桑原武夫研究会I-dia
(第1弾・・分析結果です。自由記載等詳細は、もうしばらくお待ちください)
今回は私どものアンケートにご回答頂きありがとうございました。
皆様にお答え頂いたアンケートの集計を行い
その分析した結果が出ましたので、その報告をしたいと思います。
最初に私たちは障害者の方についての基本知識が何もなかったために、障害者の方の現状把握として少し古いのですが、平成8年度身体障害者実態調査のデータの集計をしました。
まず、全国の障害者数は約300万人、その内訳は多い順に肢体不自由者170万人、内部障害者63万人、聴覚言語障害者35万人、視覚障害者30万人、重複障害者18万人となっています。
今回わたしたちがアンケート調査をした視覚障害者の方は障害者の方全体から見ると少ないと思うかもしれませんが聴覚障害者の方、肢体不自由者の方、内部障害者の方などは目が見えるので通常の端末が使えます。しかし、視覚障害者の方の場合は目が見えないために通常の端末を操作するのが難しいと言えると思います。
そこで、私たちは視覚障害者にアンケート対象者を絞ることにより、視覚障害者の方が本当に携帯電話を求めていて、そこに市場見出すことができないかと考えました。
次に視覚障害者の方に注目し、同じく身体障害者実態調査より、等級別の人数と年齢別の人数について見ていきました。
まず、等級別に見てみると、1級が全体のほぼ3分の1を占めます。
このことから、これからの障害者の方の携帯電話市場を考えると全盲者の方のサポートが鍵となるのではないかと考えました。
次に年齢別の人数ですが、70歳以上の高齢者の方が全体の約半分を占めるということから
高齢者の方全体に向けたサービスなども考える必要があるのではないでしょうか。
そこで、高齢者の方の全国数の推移を見てみると、年々増加傾向にあり、このことから視覚障害者の方へのサポートと高齢者の方へのサポートの両方を考えた広範囲に及ぶ市場に向けたサービスを提案していく必要があると思いました。
次に、現在障害者に向けて携帯電話会社がすでにおこなっているサービスについて調査し、わたしたちは2つのサービスについて注目しました。
まず1つ目は、アステル沖縄が行っている、障害者高齢者割引です。このサービスは満60歳以上の方、または体な不自由な方を対象に月の基本料金を大幅に割引をするというものです。
2つ目にジェイフォンの聴覚障害者専門ショップについてです。
このショップは昨年の11月20日に東京・渋谷に試験的にオープンしました。当初は知名度不足から採算の問題もあり、閉店が危惧されましたが、最近では来店数も増え、社会的認知度が上がったということで存続が決定しています。
それに加えジェイフォンでは各地域の聴覚障害者団体からの要請により携帯電話の無料出張なども実施しています。
以上の2つのサービスはすでに行われていますが、対象者が狭すぎるということもあり、さらなるサービスの全国展開が必要だとわたしたちは考えました。ここまでが障害者の方の現状把握や既に行なわれているサービスについての調査報告でしたが以下より、今回ご協力頂きましたアンケートの分析結果を報告致します。
まず、アンケート結果に入る前にアンケート概要について軽く紹介致します。
今回のアンケートの聴取期間は、2002年6月12日から18日の一週間でした。
調査対象は、視覚障害者の方のみであり、調査方法は、紙とメールと電話と口頭による4つの方法で行ないました。
その結果としてアンケート回答者数は全部で489人となりました。
それでは、これから分析結果について報告致します。
まずはじめに性別についてお聞きしたところ、回答者数489人のうち男性が340人女性が131人、無回答が18人いました。
次に年代についてお聞きしたところ、30代から50代の方に多く集中していることが分かりました。具体的な人数でいいますと、10代が21人、20代が68人、30代が98人、40代が130人、50代が104人、60代が31人、70代が4人、無回答者が33人いました。
次に職業についてお聞きしたところ、三療師と答え方が最も多い134人となり、次に学生が76人、公務員が55人、教員が33人、主婦が28人、会社員が24人、病院や福祉施設職員が14人、無職が30人、その他が54人、無回答者が41人いました。
次に障害者等級につていお聞きしたところ、1級と答えた方が301人と全体の半分以上を占めていました。
2級が91人、3級が18人、4級以下が20人、無回答者が59人いました。
それでは、次に選択式回答による質問の分析結果について報告します。
まず、携帯電話の使用状況についてお聞きしたところ、回答数489人のうち431人(88%)の人が携帯電話を持っていて,58人(12%)の人が携帯電話を持っていませんでした。このデータ結果より、視覚障害者の方のほとんどが携帯電話の必要性を感じていると言うことができます。また、携帯電話を持っていない人で今後欲しいと思っている人が58人のうち41人(72%)もいました。
次に現在使っている携帯電話の会社についてお聞きしたところ、68.8%がドコモを使っておりジェイフォンは9.6%、エーユーは15.7%、ツーカーは5.9%でした。この結果を全体の市場と比較してみるとドコモは58.7%、ジェイフォンは17.9%、エーユーは17.9%、ツーカーは5.5%でした。
この2つのデータから言えることは、現在の市場全体と比べて視覚障害者の方はかなりドコモを使用している人の占める割合が大きいということが分かりました。やはり、音声対応をしたらくらくフォンを使用している人が多かったということも要因の1つであると言えます。
次に1ヶ月の携帯電話の使用料金についてお聞きしたところ、3000円から5000円代の人が多かったのですが
10000円以上使っている方が50人もいたことから、必ずしも安ければ安いほどいいというわけではなく
お金がかかってもそれを惜しんだりはしないという意見も見られました。
このことからも、いかに視覚障害者の方は携帯電話を必要としているか分かることができます。
次に携帯電話を持ち始めてからどのくらい経ちますかとお聞きしたところ、5年以上携帯電話を使用している人が
全体の半数以上いたという結果が出ました。このことから多くの方が携帯電話が出始めた初期の段階から持ち始めているということが分かります。
次に携帯電話の使用するときに、通話とメールとインターネットをどれくらいの割合で使用しているかお聞きしたところ,通話のみしか利用しないという人がおよそ90%いました。これからいえることは、メールやインターネットを使うことが,未だに困難なために通話しか利用しない人が多いのだと考えました。
それではメールやインターネットはどれくらいの割合で使用されているか分析してみると携帯電話でメールをしていると答えた方が全体の15%しかいませんでした。その理由として、メールはパソコンで行なうといった意見が多く見られました。またインターネット使用の割合を分析してみると2%の人だけが携帯電話でインターネットを行なうと回答しました。つまり携帯電話でインターネットをする人はほとんどいないということが分かります。さらに詳しく分析していくと、パソコンでインターネットを閲覧できる人は80%以上もいました。
つまりインターネットには関心があるけれど、携帯電話がインターネットをするための道具である考えている人がほとんどいないということです。そこには携帯電話よりパソコンの方が使いやすいという考える何かがあると私たちは考えました。
その疑問についてはこれから報告する皆様の多くの自由回答意見から知ることができました。
ここからは、自由回答による質問の分析結果を報告致します。
1つ目は携帯電話会社の選択要因です。
ここでは以前私たちが行った学生向けのアンケートと比較検証いたしました。
大きく違いがあらわれていたのはブランドイメージと通話音質でした。
ブランドイメージは学生にとっては32%ともっとも大きな選択要因でしたが視覚障害者の方々にとっては6%にとどまりそこまで気になるものではないようです。
それよりも視覚障害者の方々が気になるのは通話音質で、これは学生の選択要因としてはわずか1%とかなり低いものでしたがやはり視覚障害者の方々では11%にのぼり、通話音質はとても重要な要素であるといえます。
さらに数字として違いはあらわれなかったのですがともに大きな選択要因として上がっていたのが周りに持っている人たちが多いからというものです。
しかしこれは学生の場合、シェアの広さとしてブランドイメージにつながっているのに対し視覚障害者にとって周りに持っている人が多いというのは安心感、不安の解消といった意味があるのではないかと思いました。
また少数意見にも私たちは注目してみました。
まずエリアが広いからという意見です。
これは健常者が電波の状況をディスプレイで確認できますが視覚障害者の方々にとっては困難なので、エリアが広いことが重要な選択要因に挙がってくるのだと思いました。
つぎに104サービスがついているからという意見がありました。
104サービスというのは音声によって知りたい相手の電話番号を教えてくれるサービスです。
これもディスプレイを見ながら数種類のボタンを何回も押して相手の電話番号までたどり着くことが困難な視覚障害者の方々にとってとても必要なサービスであり携帯電話を選ぶ上でついていて欲しい機能ということでした。
また点字の取扱説明書、使い方の口頭説明という意見もありました。
携帯電話を使いこなすためには説明書を読まなくてはなりません。
それを点字にしてくれたり口頭で説明してくれるサービスは絶対必要なものであると思います。
ここまでが携帯電話会社の選択理由の分析結果でした。
次の分析結果は機種の選択要因です。
まず16%の方々が答えていたのが音声に対応しているからというものです。ただこれはf671iユーザーの方々に限った意見なので
私たちはこれ以外の意見に注目しました。するともっとも多い22%の方々が答えていたのがボタン操作がしやすいという意見でした。
これは音声に対応していないとき今自分がなにをしているのかということを確認する手段はボタンを押した回数です。
例えば真ん中を1回押して下を7回押して右を3回押すとメール機能へたどり着くなどです。
ならばこのとき回数がはっきりと確認できる端末である必要があります。ボタン操作は確認手段としてかなり大切なものなのです。
また少数の意見としてショートカットキーが使えるというものがありました。
音声対応できるか否かに関わらずボタンを押す回数が少なければ少ないほど誤操作は減ります。
ショートカットキーはボタンを押す回数を減らしご造作を減らすことで必要な機能なのでしょう。
ここまでが機種の選択理由の分析結果でした。
次の分析結果は携帯を持って便利になったことです。
多かった意見から3つみてみると公衆電話を探さなくてよくなったという意見が35%。
つぎにいつでもどこでも自由に連絡が取れるという意見が25%、待ち合わせに便利という意見が22%という結果になりました。
このあわせて82%の意見は共通して外出先でひとりでできることが拡大したという意見でした。
携帯電話という移動しながら通信できるツールは視覚障害者の方々にとってひとりでできることを拡大してくれる手段なのでしょう。
また少数ですが注目すべき意見としてタクシーが呼べるというものがありました。
これも危険や不安が多い外出先での移動手段として比較的安全なのがタクシーであり携帯電話でタクシーを呼べるということはとても便利なことなのです。ここまでが携帯を持って便利になったことの分析結果です。
自由回答によるデータ最後の分析結果は携帯電話に欲しい機能です。
やはり71%ととても多くの方々が答えていた意見が全機能の音声化でした。
どんな便利な機能が携帯電話についても使えなくては意味がありません。そういった意味で携帯電話の全部の機能が音声によって操作できるようになることが、視覚障害者の方々にも便利に携帯電話を使ってもらう上で必要不可欠なことなのでしょう。
注目すべき意見としてはまずフォントやコンストラストの設定という意見がありました。
一口に視覚障害者の方 といっても個人によって視力や見え方は違ってきます。
そのそれぞれの視力や見え方にあったディスプレイに設定変更できるのならばさらに携帯電話は便利になっていくでしょう。
そして個別着信音が欲しいという意見もありました。これも誰から着信したのかディスプレイでの確認が困難である視覚障害者の方々にとって、その人特有の着信音があれば瞬時にかかってきた人が誰なのか判別できるのです。
さらに障害者割引を求める声もありました。便利な機能を安く届けるということがもっとも大切なことでしょう。
まとめるとやはり全機能の音声化がもっとも求められてる機能であるといえます。
私たちのアンケートで携帯電話を音声なしで操作できると答えた人は27%にとどまっており、それだけ音声機能は渇望されている機能なのです。
しかし皆共通して携帯電話についているメールやインターネットなどの機能全部使いたいという考えはもっています。
スクリーンリーダーの携帯電話版がベストだと思いますが、まずは音声に対応するということが視覚障害者の方々に使いやすく便利な携帯電話にしていく上で絶対大前提の機能であるといえます。
そしてそれとともに視覚障害者の方々に限らず全ての人たちにとってつかいやすい携帯電話になっていくことがもっとも大切なことなのでしょう。
以上が今回のアンケート調査における分析結果の報告でした。
ご協力頂き誠にありがとうございました。