表紙 『障害理解のための冊子』解説書 2023年 改訂 「障害理解のための冊子」表紙のスクリーンショット 社会モデル・人権モデルに基づき、視覚障害を題材として『障害理解のための冊子』を制作しました。 『世界人権宣言』 All human beings are born free and equal in dignity and rights. すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。 (第1条より) はじめに 私たちは、社会モデル・人権モデルに基づき、障害理解講座をすすめています。 講座の目的は、「誰にも障害(バリア)のない共生社会ができること」です。 @ 環境が変わることにより障害が軽減または解消できることを知ること A「なぜ」そのような障害が作られ、または解消されるのかの原因と構造を理解すること B 受講者が自らの言動を振り返り、身近な家族・学校・地域社会の中で自分たちの生活の中にある障害を作らない、あったらなくす具体的な行動ができるようになること よって、目の見えない人の機能的な制限を知り、どのように接して介助するかという行為を学ぶことを目的とはしていません。 このような思いをご理解の上、本解説書をお読みいただければ幸いです。 表紙裏 見開き 左側 イラスト: 白杖を持っている直子さん(冊子表紙中央の直子さん)) [イラストの中の文] 青に変わったことが伝わらない ( 青信号で渡れない ) のはなぜ? 社会モデル 信号に視覚情報だけしかない →原因は 環境 にある イラスト: 信号のアップ 個人モデル 目が見えないから →原因は 人の体 にある イラスト: 白杖のアップ ===イラストはここまで 障害の社会モデルとは 障害(バリア)ができる原因は、社会(モノ、環境、人の意識等)のあり方にあるという考え方です。個人の心身機能の不自由は、障害(バリア)の原因ではなく人の特性、多様性と考えます。 上の図で考えると、青に変わったことが伝わらない原因を「目が見えないから」とするのが個人モデル・医学モデルです。目を見えるようにしなければ伝わりません。一方、社会モデル・人権モデルでは、「多様な人がいることを無視して音の出ない信号機を設置したこと」が原因であると考えます。信号機のしくみを変更すれば伝わります。「障害(バリア)の原因と解決の責任がどこにあるか」が、社会モデルと個人モデルでは大きく異なるのです。 社会モデル・人権モデル と 個人モデル・医学モデル の対比の表 [項目 社会モデル 個人モデル の順] 基礎となるもの 世界的な考え方 無意識に思い込んでいる考え方 人の価値 多様性の尊重 (みんなちがって当たり前) 健常こそが正常である 障害者の捉え方 一人の人間として尊重 庇護する対象として見る 障害の意味 バリア(社会的障壁) からだが不自由なこと 障害の原因 配慮の不平等 病気やケガ 障害の解決法 配慮の平等 病気やケガが治ること ===表ここまで 出典:久野研二(2018)「社会の障害を見つけよう:一人ひとりが主役の障害平等研修」(現代書館)をもとに作成 個人モデルで考えている限り、障害がなくなる日は永遠にやってきません。 しかし社会モデルの考え方は、社会の責任として障害をなくすことに取り組むのですから、当然障害はなくなっていきます。 社会モデルは共生社会への試金石なのです。 表紙裏 見開き 右側 私たちの講座と従来の講座とを比較したものです。 私たちの障害理解講座は障害平等研修を参考にしています ===対比の表ここから [項目、私たちの障害理解講座 社会モデル・人権モデル、 従来の啓発研修 個人モデル・医学モデル、の順]   研修実施者 視覚障害当事者 医療や福祉の専門家 実施する体験 見ないで「できる・わかる」体験 アイマスクによる恐怖と絶望の体験 着目点 社会にある差別や不平等 人のからだの不自由 目的 人の意識も含めた社会の配慮の不平等で 障害が作り出されていることに気づく 障害者の一般的な助け方を知る 受講後の変化(次の3項目) 障害は 自分の生活に関係ある 自分には関係ない たいへんだ 気持ちは ありのままでいいんだ かわいそう いやだ 行動は まず学級内で互いに配慮して障害をなくす 障害者には優しくしてあげようと思う ===表ここまで 誰にも障害 バリア のない共生社会ができるためには、「全ての人が、社会とのかかわりの中で尊厳のある一人の人として暮らしていること」を、無視しては考えられないはずです。 しかし、従来から人権教育・福祉教育と称して、「障害者にはやさしくして助けてあげましょう」という個人モデルの講座が当たり前のように実施され続けられてきました。これは人権を無視するつもりもなく、よかれと考え実施していることなのですが、障害者の機能的制限にだけ着目しているので、無意識のうちに社会とのかかわりは無視されて「健常者から庇護される者・別世界に生きる劣った者」と障害者を位置づけてしまうのです。このようなことで結果的に差別助長教育になってしまっており、きわめて残念な現状です。 ぜひ、人権教育で何を学んで欲しいのかを今一度考えてみてください。 『障害理解のための冊子』の概要 1.ナビゲートキャラクター直子の自己紹介(p2) 2.視覚以外の感覚の確認(p3) 3.直子の生活 : 障害が ないとき あるとき (p4〜p13) 4.障害とは何か(p14 p15) 5.障害をなくす3つの社会のしくみ(p16〜p21) 6.健常者への適用(p22 p23) 7.障害の真の原因に気づき解決方法を考える(p24 p25) 8.皆さんへのメッセージ(p26 p27 ) ナビゲートキャラクター直子さんのイラストから吹き出し: 私たちの講座の事前・事後学習にお役立てください。 冊子はここから [児童生徒向け冊子をダウンロードできるQRコードを掲載] 次の見開き 左側 アイマスク体験は やめて!! (赤の太いアンダーライン) アイマスク体験は極めて危険な体験で、「何が目の見えない人の障害(バリア)になっているのか」を正しく理解することにはつながりません。 アイマスク体験は視覚障害者の体験ではありません。強いて言うならば失明した瞬間の体験です。 視覚は他の感覚とは違い、一度に膨大な量の情報を入手することが可能ですから、目の見える人がアイマスクでその情報を一瞬にして遮断されると「見えない」=「怖い・何もわからない・できない」と感じてしまうのは当然のことです。これは目の見えない人の状況とは大きく異なります。 目の見えない人は、見ること以外の感覚に常に意識を向けて生活しています。それに対して目の見える人は、大部分を見ることに頼っているので、その他の感覚に意識を向けることがあまりありません。つまり視覚以外の感覚を使い情報を集めて活用する経験がないのです。 経験のないことはできなくて当たり前なのですが、多くの場合この「経験がないこと」には着目されることがなく、目が見えないからできないのだと直観的に決めつけ、大きな誤解による間違った理解がされてしまうのです。 ですから、小・中学生など年齢が低いほど「何が目の見えない人の障害(バリア)なのか」を能動的に考えることが難しく、社会のしくみの不平等に気づくことは困難です。 ===赤のアンダーライン アイマスク体験は、突然に視覚を遮断されて感じる衝撃的な恐怖と無力感のみが強烈に印象づけられ、「見えなくなったら大変・そうはなりたくない」というマイナスの記憶だけを残します。そして、このことから呼び起こされる絶望感が、トラウマとして残る可能性が高く、更には身体的な大けがにもつながる、極めて危険な体験なのです。 ===アンダーラインここまで まだまだ多くの学校で、このようなアイマスク体験活動が有効な体験と誤解されて実施し続けられていることは極めて残念でなりません。 ぜひ読んでほしい! 大人には想像もつかない行動をするのが 子ども です 「アイマスク体験レポート 〜 一人の小学校教師の実践記 〜」 [View-Netホームページに掲載しているレポートを直接開けるQRコードを掲載] 直子さんのイラストから吹き出し: 差別の助長につながるような体験はやらないで!! 見開き 右側 【 おすすめ体験 】忘れていました! こんな感覚があったんだ 私たちの体験の目的は、目の見える人が忘れがちな「視覚以外の感覚でも様子が伝わること」を思い出し、それを活用することで、今までは「視力を使わないとわからない」と思っていたことが、実は「使わなくてもわかる」ということに自ら気づくことです。 アイマスクは、大きな誤解や偏見を生みやすいので使いません。 おすすめの体験は、見なくても「聞くこと」や「さわること」で判断できる体験です。 例:聞いてわかる →「ビン・缶・ペットボトル」の音の録音を聞いて区別する 録音した声や音を聞いて、誰なのかを判断する 先生の足音あてクイズ 例:触覚でわかる → 手元を見ないで 筆箱から消しゴム、ランドセルからペンケースを取り出す この他の体験例はこちらから [View-Netホームページに掲載している体験例を直接開けるQRコードを掲載] 直子さんのイラストから吹き出し: 見ないとわからないのは慣れていないだけ。慣れたら誰だってわかるようになるわ! トピック記事 【 障害者権利条約 と 障害者差別解消法 】 2006年に第61回国連総会にて採択された「障害者権利条約」は、あらゆる障害(身体障害、知的障害及び精神障害等)のある人の尊厳と権利を保障するための21世紀初の国際人権法に基づく人権条約です。日本政府の署名は、2007年9月28日に行っており、2014年1月20日に批准しました。 その理念は2011年に施行された改正障害者基本法に明記され、成立から3年を経て2016年に施行となった 「障害者差別解消法」などにも盛り込まれています。そこには、障害者とは「社会にある障害(バリア)により、社会生活において相当の制限を受ける人のことである」とあります。障害の原因が社会にあることが明記されたのです。 「障害者権利条約」わかりやすい版 パンフレット 外務省 「障害者差別解消法が変わります」 リーフレット 内閣府 [それぞれを直接開けるQRコードを掲載] 冊子p2 私は直子!「見えない」というからだの障害があります [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p2 タイトル: 私は直子!「見えない」という体の障害があります ●本文: この冊子では、直子さんの生活を通して「障害」が作られる原因に気づき、どうすれば「障害」をなくしていけるのかをみなさんと考えていきます。 ★イラスト 白杖を持った直子さんの全身(左向きで左方向に歩いている感じ、笑顔、こちらを向いて手を振っている) ○直子さんから吹き出し: 私は直子。33さい、夫と5さいの女の子の3人家族。仕事は事務です。子どもを保育園にあずけて共働きで暮らしています。小さいときは普通に見えていましたが、中学生くらいから少しずつ見えにくくなり、結婚したときにはほとんど見えなくなりました。 ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] :障害とは何か 目の見えない人の生活は特殊ではない まず、冒頭でこの冊子の「ねらい」を提示しています。これを読んだときに「障害の原因は病気や事故なのに、それ以上何を考えるの?」 「障害をなくすって、事故予防とか病気を治す方法を専門家でもないのに考えるの?」と、疑問に感じる人が多いのだと思います。 障害(バリア)は 「からだが不自由なことだ」と思い込んでいる人に障害って何だろうと考えるきっかけとなる言葉を最初に示しています。 そして、次にこの冊子のナビゲートキャラクターの直子に自己紹介をさせています。 視覚障害者に対して実際とは違う次のような姿を想像していることはありませんか。 ○何もわからなくて何もできないから、着替えや食事も含め常に誰かに世話をしてもらっている ○自分たちとは全く別の暮らしをしている ○生まれたときから全く見えない ですから、ナビゲートキャラクターの直子は、大人になってから目が見えなくなり、「結婚して共働きをしながら、夫と共に家事と子育てをしている」という、ごく一般的な自立した女性として描いています。 この直子の設定は、特別に作りあげたものではありません。多くの視覚障害者の一般的な姿そのものです。 冊子p3 見えない人はこのようなものを手がかりにしています [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p3 タイトル: 見えない人はこのようなものを手がかりにしています ★ページの上側のイラスト: 直子さんが洗濯機の点字を読みながらスイッチやボタンを触って確認している。 ○直子さんから吹き出し: これが電源ボタンね。 ●本文: 直接さわれるものは手や足、白杖などで確認します。 ★ページの下側のイラスト: 直子さんが点字ブロックに沿って歩道を歩いている。駅入口の角にはコーヒースタンド、コーヒーの香りがただよっている。入口の奥にある改札口で「ピンポン」と鳴っている音を聞いて改札口の方向と距離感をイメージしている。 ○直子さんから吹き出し: 左からは今日もいい香りがしているわ、いつものコーヒーショップね。右から「ピンポン」が聞こえるから、あと10メートルくらいで改札口だわ。 ●本文: 音やことば、においなどからも周りの様子が伝わります。 ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] :判断するために必要な情報は目以外からも伝わる 人は「状況を把握するための情報」を入手し、それを元に判断して行動します。ですので、その情報が入らなければ、判断する力があってもわからない・できないという状況になってしまいます。この「情報が伝わらないこと」が障害(バリア)です。 人には、聴覚・触覚・嗅覚・味覚など、見ること以外から伝わる感覚があります。これらの感覚から情報が伝わる環境(社会のしくみ)があれば、障害はなく、わからない・できないという状況にはなりません。 そして、これらの情報と今までの記憶や経験を組み合わせることで、より多くの障害がなくなっていきます。 冊子p4p5 直子の生活・屋内編 [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p4 ★ページ一番上 いらすと: ほほえんでいる直子さんの顔 ○顔から吹き出し ここからは、私の生活を紹介するわね!見えなくてもわかることがたくさんあるのよ。 ★上側のイラスト: 鍋やボウル・ざるなどが置いてある棚 直子さんは右手にフライパン、左手でフライ返しを持っている。 ●本文: さわれば形や材質でわかるし、さらに置き場所を決めておけばすぐに取りだせます。 ★中ほどのイラスト: 揚げ物をしている直子さん。別のコンロではやかんでお湯が沸騰してやかんのふたがかたかたしている。 ●本文: お湯のわき具合は音の変化でわかります。あげ物も油に入れたときとあがったときの音のちがいでわかります。 ★下側のイラスト: 包丁でリンゴの皮むきをしている手元 ●本文: 皮と身はちがう手ざわりなので、むき残すことはありません。 p5 ★ページ一番上 いらすと: ほほえんでいる直子さんの顔 ○顔から吹き出し: 見えなくても伝わるしくみや配慮があれば私にも知りたいことがわかるわ。 ★上側のイラスト: オフィスの机の上にパソコン、直子さんが座っていてキーボードをたたいている。耳にはイヤホン(音声が聞こえているイメージ) ●本文: 画面の文字を読み上げるソフトを入れて、キーボードで操作します。 ★左下のイラスト: スマホのホーム画面、アプリが並んでいる。その中のメールのアプリに直子さんの指先が触れている。スマホから「メール」と読み上げ音が出ている。 ●本文: このスマホはさわると音がでて操作できるようになっています。 ★右下の写真: 目盛りが触ってわかる定規 ●本文: 定規のめもりがうき出ているので、さわってわかります。 ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] :視覚に制限があっても、聴覚・触覚から情報が伝わる環境なら障害はないので困らない p4最初に目の見える人が気に留めることが少ない「見ること以外で伝わる情報」について紹介しています。 [冊子掲載のイラストの解説] 上:触覚で区別でき、すぐに取り出せるように整理整頓している例です。整理整頓は目の見える人にも便利ですね。 中:沸騰している音など、聴覚で状態が伝わる例です。 下:包丁も野菜も手で触れているので状態が伝わる例です。 ===イラストの解説ここまで ここで特に重要なことは、「見えないのにすごい」で終わらせないようにすることです。 目の見える人には日常的に莫大な視覚情報が入ってくるので、見ること以外の感覚に意識を向けて判断し、行動する経験がほとんどありません。ですので「自分には触っただけ・聞いただけでは、わからない・できない。すごい!」となりがちです。でも冷静に考えてみれば、経験がないのですから、それは当たり前のことです。逆に目の見えない人は日常的に見ること以外の感覚に意識を向けているので、決してすごいことではないのです。 皆さんの生活の中でも、あらゆる場面において経験の有無で、わかること・できることが変わってくることがあるのと同じことなのです。 p5その仕様により障害(バリア)がないものを紹介しています。 [冊子掲載のイラストや写真の解説] 上:画面読み上げソフトを入れ、キーボードを使って市販のパソコンを使う例です。最近では簡易なものではありますが画面読み上げのしくみがOSに最初から搭載されるようになってきました。 左下:「音声読み上げと、タッチジェスチャーの変更」のしくみが、最初から搭載されているスマホの例です。比較的シェア率の高いメーカー数社では、この方式が取り入れられています。画面を見て操作する人はこの機能をONにしていないだけです。 右下:目盛りの線が浮き出ていて色使いにも工夫がある定規の例です。 ===イラストの解説ここまで 機器に「見えないことへの配慮(見なくても伝わるしくみ)」があるので、障害がないから使えます。 冊子p6p7 直子の生活・屋内編 [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p6 ★ページ一番上 いらすと: ほほえんでいる直子さんの顔 ○顔から吹き出し: 「見えるのがあたりまえ」で作られたものは私には使えないから、自分なりの工夫でなんとかしているものもけっこうあるの。 ★左上のイラスト: 墨字だけの表示の同じ形のドレッシングのボトル、片方に輪ゴム ●本文: 片方のビンに輪ゴムを巻いて中身を区別しています。 ★右上のイラスト: 2枚のポイントカード それぞれのカード右下に点字のシールが貼ってある ●本文: 何のカードかがわかるように点字シールをはっています。 ★左下のイラスト: 同じデザインの靴下、玉留めの数で色を区別している ●本文: 色を区別するために玉どめの数でわかるようにしています。 ★右下のイラスト: お財布の中身が見えている。1万円はそのまま、5千円は半分に折って、千円は4分の1に折って入れてある ●本文: おさつは種類で区別して入れています。 p7 ★ページ一番上 いらすと: 困った直子さんの顔 ○顔から吹き出し: こんなことは工夫も無理!!いろいろな人が製品やサービスを使うことを作り手が意識してくれたら障害は作りだされないのではないでしょうか。 ★上側のイラスト: パソコンの画面 画像で作られていて音声で読み上げられない。スピーカーからは音声が出ていないイメージ ●本文: 読み上げソフトなどに対応した「作り方のルール」を守っていないホームページは、音声で読み上げられません。 ★左下のイラスト: 電磁調理器のタッチパネル式の操作盤 ●本文: 見える人しか操作できません。さわると音がでて操作できるしくみがあれば使えます。 ★右下のイラスト: 墨字の本 ●本文: 見える人しか読めません。テキストデータなどの提供があれば読めます。 ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] :製品やサービスの作り手の意識で障害が作られたりなくなったりする 少しの工夫で障害をなくすことができる まだまだ多くの製品は「見えるのが当たり前」で作られているので、見えない人に「情報が伝わらない障害」があります。 p6自分の工夫でなくせる障害を紹介しています。 [冊子掲載のイラストの解説] 左上:形も手触りも同じボトルの片方に輪ゴムをつけて、触覚と記憶で区別できるようにしている例です。 右上:何のカードか伝わるように点字を書いたシールを貼ってわかるようにしている例です。 左下:形も手触りも同じ靴下に数の異なる玉止めをつけて、触覚と記憶で色の区別をしている例です。 右下:お札を間違いなく取り出せるように、折り方を変えて、触覚と記憶で区別している例です。 ===イラストの解説ここまで p7自分ではなくせない障害を紹介しています。 [冊子掲載のイラストの解説] 上:画面読み上げソフトがインストールされていて障害のないパソコンなのですが、コンテンツの作り方が読み上げソフトに対応していないので、目で見ないと内容が伝わらず、操作できなくなってしまっています。 左下:目で見ないと状況が伝わらず、操作できない電磁調理器です。 右下:目が見えないと読めない印刷物です。 ===イラストの解説ここまで これらは作り手が見えるのが当たり前の意識であるために作られた障害です。とりわけWebコンテンツについては読み上げソフトなどに対応した「作り方のルール」が定められていますが、それを知らない人がほとんどです。 社会(作り手)の配慮がないために、本来自分で解決できることが、「見える人に頼んで言葉で伝えてもらう、または操作を代行してもらうこと」でしか解決ができません。個人の責任で他の人の「やさしさ」に頼らざるを得ないのが現実です。 作り手が自分の状況が当たり前ではないことを理解し、多様な人たちへの最大限の配慮をする意識を持つことにより障害はなくなります。 『尊厳なきバリアフリー』のスクリーンショット 3-7「あたりまえ」と「やさしい」の間にある差別 私は決して「やさしさ」や「思いやり」を否定しているわけではない。むしろ人間として欠いてはならないものだと思っている。しかしそれは権利や尊厳という価値観によって平等な社会参加という基盤ができたうえで、その質を高めていくという方向性の中で使われるべきだ。決して、「やさしさ」や「思いやり」によって平等な社会参加が実現できると考えてはならない。 平等に暮らせるようになればそれこそが「やさしさ」と「思いやり」のある社 会と言えるのではないかという意見があるとすれば、それは隠された差別意識によるものだと言うことができる。 妻に暴力をふるう夫がいる。ある日その夫は態度を改め、暴力をふるわなくなった。この夫は「やさしくなった」と言えるのだろうか。 夫はやさしくなったのではなく、「あたりまえ」になっただけである。今まで暴力をふるっていたことが異常だったのだ。 今まで社会に参加させてもらえなかった障害のある人が、平等に参加でき、暮らせるようになったとしたら、それは他の人と同じレベルになるだけで、人間として「あたりまえ」になるだけである。ただ「あたりまえ」になるだけのことを「やさしい」と言うとしたら、障害のある人には他の人とは低いレベル…他の人にとっては参加できることはあたりまえだけど障害のある人は参加できないことがあたりまえだというレベルの違い…を前提としているということである(図3-2:多くの人は参加できるのが当たり前だが、高齢の人や障害のある人に対しては参加できないのが当たり前だというところから始まるので、参加できただけで「やさしい」と考えてしまう)。これこそが差別というのではないだろうか。 アクセシブルなまちづくりのことは、よく「人にやさしいまちづくり」と呼ばれている。障害のある人からの行政への要求にも「人にやさしいまちづくり」をとの文言がしばしば出てくる。しかしその実質は、多くの人が自由に行動しているのと同等な環境を障害のある人にも整備してほしいというものであり、バリアだらけの現状を、他の人がバリアなど感じなくてすんでいるような「あたりまえ」の状態にしてほしいという求めである。これを「やさしい」と言うとしたら、先述のように、それ自体が差別的な考え方で、障害のある人自身がそのことに気づいていないという、はなはだ深刻な事態である。 『尊厳なきバリアフリー』 川内美彦 著 より引用 出版社:現代書館 ※テキストデータ請求券付き 絵 直子さんのイラストから吹き出し: この配慮が欲しかったのです 冊子p6p7 直子の生活・屋内編 [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p6 ★ページ一番上 いらすと: ほほえんでいる直子さんの顔 ○顔から吹き出し: 「見えるのがあたりまえ」で作られたものは私には使えないから、自分なりの工夫でなんとかしているものもけっこうあるの。 ★左上のイラスト: 墨字だけの表示の同じ形のドレッシングのボトル、片方に輪ゴム ●本文: 片方のビンに輪ゴムを巻いて中身を区別しています。 ★右上のイラスト: 2枚のポイントカード それぞれのカード右下に点字のシールが貼ってある ●本文: 何のカードかがわかるように点字シールをはっています。 ★左下のイラスト: 同じデザインの靴下、玉留めの数で色を区別している ●本文: 色を区別するために玉どめの数でわかるようにしています。 ★右下のイラスト: お財布の中身が見えている。1万円はそのまま、5千円は半分に折って、千円は4分の1に折って入れてある ●本文: おさつは種類で区別して入れています。 p7 ★ページ一番上 いらすと: 困った直子さんの顔 ○顔から吹き出し: こんなことは工夫も無理!!いろいろな人が製品やサービスを使うことを作り手が意識してくれたら障害は作りだされないのではないでしょうか。 ★上側のイラスト: パソコンの画面 画像で作られていて音声で読み上げられない。スピーカーからは音声が出ていないイメージ ●本文: 読み上げソフトなどに対応した「作り方のルール」を守っていないホームページは、音声で読み上げられません。 ★左下のイラスト: 電磁調理器のタッチパネル式の操作盤 ●本文: 見える人しか操作できません。さわると音がでて操作できるしくみがあれば使えます。 ★右下のイラスト: 墨字の本 ●本文: 見える人しか読めません。テキストデータなどの提供があれば読めます。 ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] :製品やサービスの作り手の意識で障害が作られたりなくなったりする 少しの工夫で障害をなくすことができる まだまだ多くの製品は「見えるのが当たり前」で作られているので、見えない人に「情報が伝わらない障害」があります。 p6自分の工夫でなくせる障害を紹介しています。 [冊子掲載のイラストの解説] 左上:形も手触りも同じボトルの片方に輪ゴムをつけて、触覚と記憶で区別できるようにしている例です。 右上:何のカードか伝わるように点字を書いたシールを貼ってわかるようにしている例です。 左下:形も手触りも同じ靴下に数の異なる玉止めをつけて、触覚と記憶で色の区別をしている例です。 右下:お札を間違いなく取り出せるように、折り方を変えて、触覚と記憶で区別している例です。 ===イラストの解説ここまで p7自分ではなくせない障害を紹介しています。 [冊子掲載のイラストの解説] 上:画面読み上げソフトがインストールされていて障害のないパソコンなのですが、コンテンツの作り方が読み上げソフトに対応していないので、目で見ないと内容が伝わらず、操作できなくなってしまっています。 左下:目で見ないと状況が伝わらず、操作できない電磁調理器です。 右下:目が見えないと読めない印刷物です。 ===イラストの解説ここまで これらは作り手が見えるのが当たり前の意識であるために作られた障害です。とりわけWebコンテンツについては読み上げソフトなどに対応した「作り方のルール」が定められていますが、それを知らない人がほとんどです。 社会(作り手)の配慮がないために、本来自分で解決できることが、「見える人に頼んで言葉で伝えてもらう、または操作を代行してもらうこと」でしか解決ができません。個人の責任で他の人の「やさしさ」に頼らざるを得ないのが現実です。 作り手が自分の状況が当たり前ではないことを理解し、多様な人たちへの最大限の配慮をする意識を持つことにより障害はなくなります。 『尊厳なきバリアフリー』のスクリーンショット 3-7「あたりまえ」と「やさしい」の間にある差別 私は決して「やさしさ」や「思いやり」を否定しているわけではない。むしろ人間として欠いてはならないものだと思っている。しかしそれは権利や尊厳という価値観によって平等な社会参加という基盤ができたうえで、その質を高めていくという方向性の中で使われるべきだ。決して、「やさしさ」や「思いやり」によって平等な社会参加が実現できると考えてはならない。 平等に暮らせるようになればそれこそが「やさしさ」と「思いやり」のある社 会と言えるのではないかという意見があるとすれば、それは隠された差別意識によるものだと言うことができる。 妻に暴力をふるう夫がいる。ある日その夫は態度を改め、暴力をふるわなくなった。この夫は「やさしくなった」と言えるのだろうか。 夫はやさしくなったのではなく、「あたりまえ」になっただけである。今まで暴力をふるっていたことが異常だったのだ。 今まで社会に参加させてもらえなかった障害のある人が、平等に参加でき、暮らせるようになったとしたら、それは他の人と同じレベルになるだけで、人間として「あたりまえ」になるだけである。ただ「あたりまえ」になるだけのことを「やさしい」と言うとしたら、障害のある人には他の人とは低いレベル…他の人にとっては参加できることはあたりまえだけど障害のある人は参加できないことがあたりまえだというレベルの違い…を前提としているということである(図3-2:多くの人は参加できるのが当たり前だが、高齢の人や障害のある人に対しては参加できないのが当たり前だというところから始まるので、参加できただけで「やさしい」と考えてしまう)。これこそが差別というのではないだろうか。 アクセシブルなまちづくりのことは、よく「人にやさしいまちづくり」と呼ばれている。障害のある人からの行政への要求にも「人にやさしいまちづくり」をとの文言がしばしば出てくる。しかしその実質は、多くの人が自由に行動しているのと同等な環境を障害のある人にも整備してほしいというものであり、バリアだらけの現状を、他の人がバリアなど感じなくてすんでいるような「あたりまえ」の状態にしてほしいという求めである。これを「やさしい」と言うとしたら、先述のように、それ自体が差別的な考え方で、障害のある人自身がそのことに気づいていないという、はなはだ深刻な事態である。 『尊厳なきバリアフリー』 川内美彦 著 より引用 出版社:現代書館 ※テキストデータ請求券付き 絵 直子さんのイラストから吹き出し: この配慮が欲しかったのです 冊子p10 直子の生活・屋外編 [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p10 ★ページ一番上 いらすと: 困った直子さんの顔 ○顔から吹き出し: 街でも自分勝手な行動をする人によって障害が作りだされてしまうの。 ★上側のイラスト: 人混みの中、歩きスマホの人にぶつかられて方向を失っている直子さん ●本文: ぶつかって歩く方向が変わってしまうと目的地にうまく着けなくなってしまいます。 ★下側のイラスト: 点字ブロックの上に放置自転車 それにぶつかっている直子さん ●本文: 安心して歩けるはずのところが危険な場所になってしまいます。 ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] :他の人に対する配慮がない行動(迷惑行為)が障害を作り出す 迷惑行為で人為的に障害が作られることを紹介しています。 [冊子に掲載されているイラストの解説] 上 :方向を定めて歩いていても、ぶつかられると体の向きが変わってしまい、目的の場所に着けなくなってしまうことがあるという例です。 下:目の見えない人が安心して利用できる点字ブロック上に、自転車を置く人がいます。その動線を塞ぐだけでなく、衝突によるけがの危険を招くという極めて大きな障害の例です。 ===イラストの解説ここまで これは、一人一人がマナーを守ることで、なくすことができる障害です。 直子さんのイラストから吹き出し: みなさんも歩きスマホの人に ハッとさせられたことないですか? トピック記事  【 視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック) 】 誘導用ブロックには、階段や分岐点などで注意を促す点状タイプと、方向を示す線状タイプがあります。 “ルール通りに敷設されていること”と“どこに誘導しているのかという敷設だけでは伝わらない情報を予め記憶しておくこと”で、有効に安心して使える設備です。加えて弱視者には、「路面(床面)とのコントラスト」が大きいことも大切な要素です。 目が不自由な人には有効な動線ですが、高齢者やベビーカー、車いす利用者等には、ブロックの凹凸が障害(バリア)となってしまうことが多々あるようです。 どちらが優先されるべきことではありません。まずは様々な立場の違う人たちが十分にコミュニケーションをとることで、互いのニーズを理解しあうことが大切です。その中で知恵を出し合い、互いの安全や利便に配慮した敷設の仕方を見つけていくことが必要だと考えています。 このようにして、ユニバーサルデザインのまちづくりをしていくことが、とても重要です。 点字ブロックの写真 視覚障害者の歩行のアイテム [View-Netホームページの歩行編を直接開けるQRコードを掲載] 盲導犬 トミーちゃんの写真 冊子p11 直子の生活・屋外編 [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p11 ★ページ一番上 いらすと: ほほえんでいる直子さんの顔 ○顔から吹き出し: 体にある障害に合わせた支援技術の開発でもっと快適に暮らせるようになるわ。 こんな研究をしてくれる人が増えてほしいなー! [支援技術のタイトル(手書き文字、アンダーライン)] ★上側のイラスト: 直子さんがスマホに向かって「すぐ近くのカフェは?」と話をして音声検索をしている。 ●本文: 音声認識と音声合成を利用したスマホの機能 ★中ほどのイラスト: よこはまデパートと書いてある看板に向かってスマホのシャッターを切る直子さん。スマホから看板の内容の「ヨコハマデパート」と読み上げ音声。 ●本文: 写した画像を解析して文字を読み上げる機能 ★下側のイラスト: スマホの歩行ナビアプリの音声案内を立ち止まって聞いている直子さん。スマホから「6メートルサキ ミギホウコウデス」とスマホから音声が出ている。 ●本文: GPSを利用した歩行ナビのアプリ ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] :障害をなくす支援技術 [冊子掲載のイラストの解説] 上:AIが言葉を聞き取り、音声合成の言葉で回答する技術 中 :カメラでとらえた画像をAIが解析して、そこにある物を音声合成の言葉で回答する技術 下 :GPSを利用した歩行ナビが音声合成の言葉で行先を案内する技術 ===イラストの解説ここまで 多様な人に配慮がある社会になれば障害はなくなりますが、これを実現するためには「社会に障害を作らない、あったらなくす人」が一定数以上になることが必要ですが、すぐにとはいきません。忍耐強く20年30年と歳月をかけて働きかけていき、ようやく実現するかも知れないくらいのことです。 しかし「ある障害をなくすツール」ができた瞬間に、その障害がなくなります。そして、そのツールが期待以上の障害もなくし、さらに社会のしくみを変えていくことにも繋がることがあります。 例えば、パソコンの画面に映し出された文字を音声化するソフトが完成したときに、それまで障害だった印刷物等の文書はテキストデータの提供があることにより、読めるようになったのです。 このことにより、それまで大きな障害となっていた文書処理の障害がなくなり、目の見えない人の社会参加が飛躍的に広がっていったのです。 トピック記事 【 映像コンテンツからバリアをなくす 】 「音声解説付き」「字幕入り」のコンテンツが増えてきています。 法律もできたこともありますが、コンテンツ制作者の意識が、「最大限の多様な人たちが楽しめるように」と、見えて聞こえるのが当たり前としていた頃とは変化してきているようです。 目や耳の不自由な人ばかりでなく、 *目の見える人も、音声解説により、 映像だけでは伝わりにくいことの理解の助けになる。 動画を別の作業をしながらでも楽しめる。 *耳の聞こえる人も、字幕により、 音を出せない環境でもコンテンツを楽しめる。 聞き取りにくいせりふの理解が容易になる。 など、見えて聞こえる人にも、この配慮によりコンテンツ内容がより伝わりやすくなっています。 直子さんのイラストから吹き出し: 全てのコンテンツで、ユニバーサルデザインとして 定着してほしいな! トピック記事 【 タッチパネル 】 多くの人が使っているスマートフォンを例に考えてみましょう。 目のよく見える人も、小さい画面の細かい文字は読みにくい(障害がある)ので、画面拡大機能で当たり前に読みやすくして(障害をなくして)います。 目の見えにくい人も、カスタマイズ機能で見え方に合わせた表示ができるので障害(バリア)はなくなっていきます。 目の見えない人も、「画面に表示される文字情報を音声で読み上げ、タッチジェスチャーに音声読み上げ機能と実行機能の違いを付加するしくみ」をつけることで、障害はなくなっていきます。 比較的シェア率の高いスマホには、このしくみが初めから搭載されています。 ところが、街角で見かけるタッチパネルには、このしくみがなく、目で見てその場所をタッチして操作することでしか操作ができず、依然として大きな障害があるのです。 《タッチジェスチャーの例》 一度タップすると音声読み上げ。連続2回のタップで実行。 このしくみを使って、スマホで天気を調べてみました。動画でどうぞ  [直接この動画が見られるQRコードを掲載] 【 スマートスピーカー 】 聞こえて発話のできる人には極めて便利なツールで、多くの人が利用しています。 情報の検索ばかりでなく、エアコンや照明器具等の家電製品を声でコントロールできるので、目の見えない人の生活の質の向上にも大きく寄与しています。 【 AIが解析し写真を文章化するアプリ 】 このアプリとスマホの音声読み上げ機能によって、写真を「聞く」ことができます。 SNSに目の見える友達がアップした写真も、言葉の説明で聞くことができるので、一緒に楽しめます。 周囲の景色を知りたいときには、写真を撮ればその風景を聞くことができます。 建物の表示も、うまく映すことができれば何と書いてあるかを聞くことができるので、建物名や各階の案内も伝わります。 直子さんのイラストから吹き出し: でも表示そのものに、私にも伝わるしくみが最初からあってほしいな。 冊子p12p13 直子の見えにくくなってきたとき・少しだけ見えていたとき [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p12 ★ページ一番上 いらすと: ほほえんでいる直子さんの顔 ○顔から吹き出し 少し見えにくくなってきた中学・高校時代を紹介するわ。 ★上側のイラスト: 中学生時代の直子さん、学校の校庭を歩いている制服姿の直子さん、教室の窓から友達が手を振っているけど直子さんはわからない 友達からは「直子のやつ無視した」の心の声の吹き出し。 ●本文: 中学生のころに見えにくくなり、はじめ、いろいろと誤解されました。そんなことがたびたびあり、やはり見えにくいことを友達に知ってほしいと思うようになりました。 ★下側のイラスト: 高校時代、弱視者用書見台に教科書をのせ、ルーペで教科書の文字を拡大して読んでいる眼鏡をかけた直子さん ●本文: 高校生のころは文字も見えにくくなり、このようにして教科書を読んでいました。 p13 ★ページ一番上 いらすと: ほほえんでいる直子さんの顔 ○顔から吹き出し 働きだしたころはもっと見えにくくなって、こんなふうだったわ。 ★上側のイラスト 眼鏡をかけている直子さん、目の前の看板には目の高さで大きな文字で「横浜方面→ 」と書いてある。更に看板にはバス、タクシーの文字とマークも大きく書いてある ●本文: コントラストがはっきりした大きく見やすい表示が目の高さにあるところは助かりました。 ★左下の写真: 単眼鏡とフラッシュライト ●本文: 見やすいものばかりではないので、単眼鏡やライトを使いました。 ★右下のイラスト: 白杖を持って歩くメガネをかけた直子さん。 ●本文: 人ごみではぶつかりそうなので、まだ少し見えていたときも白杖をもって歩いていました。 ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] :偏見が弱視者の大きな障害となっている 今、直子は全盲ですが、見えにくい状態(弱視)で過していた頃のエピソードです。ここでは、「弱視者にとっての障害」について考えていきます。 “大きな文字なら見えるだろう”は、誤解です。弱視者と一括りにしてしまいがちですが、明るさや色使いにより見えにくい、全体的にぼやけている、視野狭窄(見える範囲が狭い)で大きすぎる文字は見えにくい等、見え方は様々です。眼科医会の調べでは、視覚に何らかの不具合がある人の中のおよそ9割(約150万人)が見えにくい状況と言われています。 [冊子掲載のイラストの解説] p12上:誤解から人の意識が障害(バリア)となってしまう例です。 「見えにくいこと」は「全く見えない」よりも周囲の理解を得るのは大変難しいことです。 見えにくい人本人が、見えにくさを隠す傾向があり、周囲にはっきりと自分の状況を伝えることをためらっている人が多いことも理解を得られない原因の一つです。 日本社会において「からだの障害」は古くからマイナスの価値付けがされてきた背景があります。からだに 障害がある人もない人も、「からだの障害は恥ずかしいことでも劣ることでもない」とする考え方ができないことから起こる悪循環によるものと思われます。 誰もが当たり前に、からだの障害にマイナスの価値づけをせず異質なものとしないで、一人一人が「ありのままでいいのだ」と認識されるようになれば、障害者本人も自己否定する気持ちがなくなり、周囲に自分の状況を普通に説明できるようになるはずです。 そしてそれを周囲が「当たり前に理解すること」で、誰一人として差別や偏見で苦しむことがない社会ができると考えています。 ===イラストの解説ここまで 弱視時代の直子さんから吹き出し: 「目が見えにくいことを みんなに知られたら・・・」って ビクビクしてた もう一つ別のところに吹き出し: 見えにくいこと 友達に言ってよかった 誤解がなくなったの( ^)o(^ ) 弱視の人の見え方で、どのようなことで障害がなくなるかを紹介しています。 [冊子掲載のイラストの解説] p12下:本を読む時に見やすい位置に本を固定し、現有視力でも拡大鏡を眼鏡と併用することで文字を認識しやすくしている例です。 p13上:見やすい位置にはっきりと表示されているので障害がない例です。 中:全盲に限らず、視力が少しある人も情報収集と周囲の注意喚起のために白杖を使う場合があることを示しています。 下:今の視力を活用しながら見えやすくする道具の例です。 ===イラストの解説ここまで 弱視者は、見るために表示に顔を近づけて長時間見つめていたり、見慣れない道具を使ったりすることも あるので、「ヘンな人」と瞬間的に偏見を持たれてしまうことが、よくあります。 少し見えていても歩行に必要な情報が十分に得られない人は、白杖を持ち、そこから得られる情報も併用して歩きます。そして、白杖を持つことで法的にも守られます。しかし、「全盲だけが白杖を持つ」と誤解している人が多いために、相手が「少し見える」とわかった瞬間に「嘘つき呼ばわり」され、大きく心が傷つけられてしまうこともあります。 世の中には誰一人として同じ人はいません。しかし相手が自分とある一定以上違うと、瞬間的にヘンという感情が生まれ偏見へと繋がります。しかし、そのときに一歩立ち止まって「一人一人の違いに着目し、その人自身を理解しよう」とする意識をもって相手と接すると、偏見はなくなり、それに苦しむ人もいなくなるのではないでしょうか。 直子さんのイラストから吹き出し: これって見えにくい人だけのことではないわよね 別の吹き出し: 見えにくい人も白杖を使います トピック記事 【 道路交通法第14条 目 が見えない者、幼児、高齢者等の保護) 】 『目が見えない者(【目が見えない者に準ずる者】を含む。以下同じ。)は、 道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え、 又は政令で定める盲導犬を連れていなければならない。』 冊子p14p15 体にある障害と社会にある障害 [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p14 ●本文: ここまでは直子さんの視点で見てきました。今まで見てきた生活の中で直子さんにはいつも「障害」があったでしょうか。もしかして体に障害がある人に「障害」が作りだされるのは「社会にいろいろなちがいのある人への配慮がないこと」が原因なのかもしれません。 ★上側のイラスト 音の出ない信号機のあるの交差点で直子さんが困っている。直子さんからは「今、青なのかな?」の心の声の吹き出し。 ●本文: 見えないという体の障害はその人の力で乗りこえなければならないのでしょうか。 ★下側のイラスト: 通りかかった中学生が直子さんに声をかけている。(中学生と直子さんのtwo shot) 中学生からは「青ですよ!」の吹き出し。 ●本文: 近くの人が声で知らせたり音響信号機にしたりすれば、何の障害もありません。 p15 足が不自由な人では? のタイトルが付いた囲み   ★上側のイラスト: 車いすに乗った人がレストランの前にある数段の階段のためにレストランに入れずに困っている。 ●本文: 車いす利用者は足が動かせないという体の障害があるので、自分で努力して階段をあがらなければならないのでしょうか。 ★下側のイラスト: 上の絵の数段の階段の一部がスロープになっている(階段とスロープ)。 ●本文: 車いす利用者も使えるスロープやエレベーターがあれば何の障害もありません。 囲みここまで ページの下側 ●本文: 「社会にいろいろなちがいのある人への配慮がないこと」が原因で障害が作りだされているようです。 ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] 障害(バリア)は、社会のしくみにあるとするのか、個人のからだにあるとするのかで、大きく異なる社会が形成されていきます。 ※表紙裏の表を再度見てください。 [冊子掲載のイラストの解説] p14:目の見えない人に信号の合図が伝わらない原因を明らかにし、その解決法を考える例です。 原因:見えるのが当たり前として作られている信号のしくみに障害があること 解決法:社会の責任で信号に音で伝わるしくみを付加すること 周囲の人の声かけがあること もしその人個人の目の状況を原因とするなら、その人自身の責任で解決しなければならないのです。 p15:車いす利用者が階段の上のレストランに行けない原因を明らかにし、その解決法を考える例です。 原因:歩けるのが当たり前として作られている垂直移動の設備に障害があること 解決法:社会の責任でスロープやエレベーターといった垂直移動のしくみを設置すること もしその人個人の足の状況を原因とするなら、その人自身の責任で解決しなければならないのです。 ===イラストの解説ここまで 個人モデルでは、健常者に近づくことや独力で多くのことができるといった能力主義に価値を置きます。 社会モデルでは、個人に応じた適切な調整(合理的配慮)が提供されることが当たり前となる平等社会を追求 することに価値を置きます。社会における価値の見直しを促していることに注意してください。 また、この「障害の社会モデル」という価値の変更は、これまで日本の社会に存在している「障害者役割」 という社会の障害者に対する価値の押しつけをも問い直しています。 全盲の社会学者である石川准は、パーソンズの「病者役割」(=病気にかかった者は治療に専念する義務を負うとともに、通常の社会的責任を免除される)にならって、「障害者役割」という概念を提示しています。 障害者は「つつましく貧しく」、「障害を克服するために精一杯努力する」ことを周囲から期待されています。端的に言えば「愛やヒューマニズムを喚起し触発するようにふるまうこと」、すなわち「愛らしくあること」を期待されていると石川は言い、そのように暗黙のうちに障害者に期待される役割のことを「障害者役割」と呼んでいます。もちろん障害者に面と向かって「愛らしくあれ」と言う人はいないと思います。 しかし私たちは多かれ少なかれ「あるべき障害者らしさ」のようなものを内面化していることに気づかされます。障害者が「けなげ、ひたむき、前向き」な姿を示していれば――いわば世間の人々の期待に沿っていれば ――平穏無事ですが、そうでないと不協和音が生じます。 「障害者役割」は健常者に都合よく機能します。なぜならこのような「あるべき像」を障害者に投影している限りは、内心ひそかに持つ障害者嫌悪の感情や、それに伴う罪悪感(後ろめたさ)を忘れることができるからです。その像にあてはまらない障害者の姿が偶然目に入った時は、一瞬 嫌悪や同情を感じますが、すぐに忘れてしまいます。 障害者の側からすると、「障害者役割」に適合的なふるまいをすれば受け入れられ、そうでない時は――あるいはそもそも健常者の期待に沿いようがない人は――非難あるいは無視されます。また、健常者のまなざしを予期して、自由な言動をあきらめてしまう障害者もいます。つまり「障害者役割」とは、健常者が障害者に「こうあってほしい」と望み、それが投影されたものですから、まさに非対称な社会関係を映し出す鏡といえます。 『社会の障害を見つけよう』 のスクリーンショット 6.原因の解決:反応ではなく、プロアクティブに行動を起こす 問題が起こったときの対応(Reaction) = 障壁の維持 問題をなくす行動(Proactive Action) = 障壁の削除 → 社会の変革 (略) 例で考えてみましょう。ある店の前に段差があるとします。車いす利用者がそのお店に来る度にその段差を越える手伝いをすること、どうやって段差を越える支援をするかという援助の方法を教えること、これは問題が起こったらどうするか、という反応、対応の行動です。問題が起こってから解決のための行動を起こしています。その行動は起こった問題に対する対処的行動であり、問題の原因を解決するための介入とはなっていません。 それに対して、その段差をスロープに変えること、これがプロアクティブな行動です。プロアクティブな行動とは、問題が起こる前に起こす行動、問題発生の予防とも言えます。 反応は問題状況の原因を解決しません。上の例で言えば、障害もしくは障害の原因である段差そのものを取り去ってはいません。障害者が困難に直面したときに助けるといった行為はもちろん重要であり、そのような行為は奨励されこそすれ否定されるべきものではありません。しかし、そのような反応的な行為のみが「障害に対する行動」として奨励されれば、それは逆に障害(段差があること)を温存させ、それだけではなく、同じような段差が今後ももっともっとつくられていくことにもなります。 『社会の障害を見つけよう』 久野研二 編著 「第4章 行動づくり」 より引用 出版社 現代書館 発行年 2018年 ※テキストデータ請求券付き 冊子p16p17 障害をなくす配慮のしくみ@ バリアフリー [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p16 ●本文: では、社会が作りだしている障害をなくすための配慮のしくみを見ていきましょう。 ●本文: 今あるものに後から見直しや配慮を加え、体の障害に合わせて使えるようにしたものを「バリアフリー」といいます。あなたの心にあるバリア (障害 )も取りのぞいてくださいね ! 見えない人たちへのバリアフリーの例 のタイトル ★上側のイラスト ホーム上を歩く直子さん。駅ホームの階段を知らせる鳥の声、その鳥の声に気づいて振り返る直子さん ●本文: 鳥の声で知らせてくれるから初めて利用する駅でも階段の位置が分かります。 ★下側の写真: ソース容器の写真、その右側にソースの蓋の点字表記をズームした写真 ●本文: 点字は見えない人たちのためのもっとも配慮された文字です。 p17 見えにくい人たちへのバリアフリーの例 のタイトル [このページの本文は写真から出した吹き出しの中に書いている] ★左上の写真: 大活字本「(大活字本」という文字も写真の上に書いてある) ●本文: 大きな文字で書かれた本が少しずつ増えています。 ★右上の写真: 拡大読書器、白黒反転で表示している所を撮影(「拡大読書器」という文字も写真の上に書いてある) ●本文: 本の文字をカメラで写しとり、画面に大きく映しだします。 ★左下の写真: 宛名ガイド、封筒と葉書の表書き用を撮影(「あて名ガイド」という文字も写真の下に書いてある) ●本文: はがきや封筒にのせて書けば、あて名がまっすぐに書けます。 ★右下の写真 太い罫線ノート、幅、色の違う2種類のノートを撮影(「太い線のノート」という文字も写真の下に書いてある) ●本文: 太さだけでなく線の色も自分が見えやすいものが選べます。 ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] バリアフリーとは、人が直面させられている障害(バリア)を取り除くための、その人の状況に合わせて作られた製品・環境の調整・サービスのことです。 [冊子掲載のイラスト・写真の解説] p16では見えない人に対するバリアフリーを紹介しています。 上:目で見ないと伝わらない階段の位置を、「音」を付けて、どこにあるのか聞いて伝わるようにした例です。 下 :目で見ないと伝わらないパッケージの印刷文字に、点字をつける工夫をして触って伝わるようにした例です。 p17では見えにくい人に対するバリアフリーを紹介しています。 上左:文字そのものを、大きくはっきり印刷して、読みやすくした本です。 右:拡大読書器は、読むときに「自分の読みやすい文字の大きさに変えられる」道具です。 下左:あて名ガイドは、文字を決められた場所に曲がらないように書くための道具です。 右:印刷してあるノートの罫線が太くはっきりしているので、書きやすいノートです。 ===イラスト・写真の解説ここまで 印刷した文字のメニューしかない環境のレストランが、後からアクセシブルなWebでメニューを公開したり、点字でメニューを作成したり、口頭で読み上ることで障害をなくすことも、バリアフリーの例です。 囲み記事 【 バリアフリーとユニバーサルデザインの違いは ? 】 バリアフリーとユニバーサルデザインの違いは、はっきり線引きできるものではありません。 p16で紹介しているソースは「印刷文字」と「点字」の複数の情報発信のしくみがあるパッケージです。 最初から多様な人への情報伝達を意識しているユニバーサルデザインと言えますが、点字表示に着目すると特定のからだの状況の人に配慮したしくみが付加されているので、バリアフリーとも言えます。   冊子p18p19 障害をなくす配慮のしくみA ユニバーサルデザイン [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p18 ●本文: 初めからより多くの人が使えるように配慮した製品やサービスを「ユニバーサルデザイン」といいます。これからどんどん増えていくと思います。 ★上側の写真: 駅のホームドア  ホームドアの向こう側には電車が止まっている ●本文: 目の見えない人だけでなく、どんな人も安全に安心して利用できます。 ★下側のイラスト 段鼻が黒くはっきりとしている、踏み面の手すり寄りには赤と黄色の線が書いてある階段。 メガネをかけている高校時代の直子さんがにこにこして階段を下りている。 ●本文: 段差が見やすい階段は安心です。 p19 ユニバーサルデザインの例 のタイトル〈p18 からの続き〉 ★上側のイラスト: いろいろな人が利用しているエレベーター エレベーターには高齢者、若者、ベビーカーを押す女性が乗っている。大きなスーツケースをもった女性が乗り込もうとしている ●本文: エレベーターでは、体調がすぐれない人や大きな荷物をもっている人など、だれもが便利に使えます ★下側の写真: トイレを示す標識 カラーユニバーサルデザインにも配慮されている 「ココハ トイレデス」の音声も出ている。 ●本文: 音声案内だけでなく、色の見分けがつきにくい人たちへの配慮もあり、内容を表すマークもあれば外国人や子どもにも伝わります。 ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] ユニバーサルデザインとは、なるべく多くの人が障害に直面しないように、はじめから最大限の人が使えるようにした製品やサービスのことです。 [冊子掲載のイラスト・写真の解説] p18上:可動式ホーム柵です。全ての人が安心して利用できます。国土交通省の調べでは、2018年度のホームからの転落件数は2887件で、半数以上は酔客でした。 視覚障害者は61件に過ぎません。 下:階段の縁に色を付け、段がわかりやすいように工夫したデザインの階段です。 p19上:エレベーターです。エレベーターもあることで「からだの不自由な人」ばかりでなく様々な事情の人も容易に垂直移動ができます。 下:多様な人に伝わる表示です。絵があることで外国人や文字の認識が困難な人にも伝わります。音声案内があるので目が見えない・見えにくい人にも伝わります。 ===イラスト・写真の解説ここまで 一つのものを最大限の人が使えるようにと目指すことも大切ですが、全ての人が完璧に使えるものを作るのはほぼ不可能です。そこで重要なのは「複数の選べる手段が用意されていること」です。例えば垂直移動設備では、エレベーター・エスカレーター・階段といった様々な手段が用意されていて、利用者が自分の状況に合わせて選べることがとても大切です。それは情報においても同じことです。 囲み記事 オッとビックリ ご存知でしたか? 初めはバリアフリー製品として作られたものが、誰にでも使いやすい・快適なものなので、そのデザインが社会に定着したものが多くあります。 ○パソコンのキーボードは、視覚障害者が活字を書くために考案されたタイプライターが応用されています。 ○温水洗浄便座は、手が不自由な人がトイレで困らないようにと作られたものです。 ○レバー式ドアノブや水道コックは、手の力が弱い人も容易に操作できるしくみとして考えられました。 囲み記事おわり 様々なからだの状況の人に快適なものは、健常者にとっても快適なものになることに気づかれた人も多いと思います。製品やサービスといった社会のしくみを作るのは「人」です。 人の意識に、初めから最大限の人に配慮がある、つまり発想の根本がユニバーサルデザインであることで社会に障害を作らない、あったらなくすことに繋がるのです。 冊子p20p21 障害をなくす配慮のしくみB だれもができる配慮 [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p20 ●本文: 社会にある障害はあなたの配慮でなくせます。配慮を必要としている人を見かけたら「障害」をなくすために、声をかけてください。 見えない人たちへのだれもができる配慮の例 のタイトル ★上側のイラスト: 道に迷っている直子さん、そこにサラリーマンが通りがかる サラリーマンから吹き出し: 何かお手伝いできることありますか? 直子さんから吹き出し: 西口はどちら? ★下側のイラスト: サラリーマンと直子さんは誘導の姿勢 サラリーマンから吹き出し: いっしょに行きましょう 直子さんから吹き出し: ありがとうございます(*^-^*) p21 見えにくい人たちへのだれもができる配慮の例 のタイトル  ●本文: 見えにくい人の見え方は人によってみんな違います。歩くのは OKだけど文字を読むのは NGとか、少し暗めのところはOKだけど明るいところは NGとか、いろいろです。 ★イラスト 高校時代のメガネをかけた直子さん、バスの時刻表の文字が小さくて読めない。 時刻表を指さしながらすぐそばの人に尋ねている。 直子さんから吹き出し: すいません、私よく見えないんですけど、次のバスは何分ですか? ●本文: 見えにくいという体の障害は周囲には理解されにくいものです。何か聞かれても変に思わず、困っているのかなと思ったら「何かお手伝いしましょうか」と声かけの配慮をお願いします。 ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] バリアフリーやユニバーサルデザインのしくみで、環境整備は進んできています。しかし、現状はまだまだ「見えるのが当たり前」で情報提供されていることがほとんどで、街にはたくさんの障害があります。 また環境整備が充実してきたとしても、環境だけで多様な人にとっての障害(バリア)が全てなくなることはないのも事実です。 そこで、この環境整備だけではなくせない障害をなくすことができるのは、「人」なのです。 人の「障害をなくす意識」=「配慮」により、見えない見えにくい人の障害が激減するのです。 [冊子掲載のイラストの解説] p20:困った様子の全盲の人を見かけたときに声かけをしている場面です。 自分の思い込みではなく、相手を尊重したコミュニケーションをとり、どのような支援を必要としているのかを理解し、自分にできることを提供して、障害をなくしている例です。 p21:見えにくい人が援助を求めている場面です。 直子の弱視時代のところでも紹介したように、「見えにくいこと」は、「見えないこと」よりもずっと理解されにくい現状があります。見やすくするための道具を使ったり、長時間一つのものを見ていたりするときに、「ヘンな人」という視線を受けて、避けられてしまうことも少なくありません。まずはパッと見てヘンと思って排除しないでください。「もしかして困っているのかも」と考えてみてください。 ===イラストの解説ここまで 人は、目の前の相手を「障害者」「外国人」「高齢者」などと枠に入れて、自分の中にすでにあるイメージで決めつけてしまう傾向があります。しかしそれに捕らわれることなく「その人自身を理解しよう」とする意識をもって相手と接すると、「偏見による障害」はなくなるのではないでしょうか。 人はみな違うのだから、異質を当たり前として、配慮の声かけをすることが社会にある障害をなくすことにつながるのです。 困った表情の直子さんから吹き出し: あなたの声や言葉の様子から、意識まで伝わります だれもができる配慮 吹き出し:よく考えたら普通のことですよね ○研修会に参加したいが、会場での移動や研修会資料が読めるか不安である。 →移動しやすいよう出入口に近い席に、受付窓口から介添えして席まで案内した。 →資料をPDFやテキストデータにして事前に送付した。 ○盲導犬を連れた客が来店したら、他の客から犬アレルギーだという申出があった。 →双方に了解いただいた上で、お互いが離れた位置になるよう配席を変更した。 ○処方された2種類の点眼薬が同じ形状の容器で、区別ができない。 →薬を渡すときに一方の点眼薬にテープを貼り、感触だけで判別がつくようにした。 こんなことを言ったことはありませんか? 吹き出し:提供義務違反ですよ ○先例がありません →障害者差別解消法が施行されており、先例がないことは断る理由になりません。 (例)受験の際、筆記が困難なためデジタル機器の使用を求めたが、前例がないことを理由に検討もされずに断られた。 ○もし何かあったら・・・ →どのようなリスクが生じ、そのリスク低減のためにどのような対応ができるのか、具体的に検討せずに漠然としたリスクを理由に断ることはできません。 (例)イベント会場内の移動に際して支援を求めたら、「何かあったら困る」という抽象的な理由で断られた。 ○特別扱いできません →だれもが平等に情報がとどくよう調整することは特別扱いではありません。 (例)自由席の勉強会において、弱視のため板書が見やすい席を希望した際、事前の座席確保についての可能性を検討されずに「特別扱いはできない」と断られた。 トピック記事 【 こんなことはしないで!! 】 気持ちはありがたいのですが、自分の思い込みでされてしまうと、かえって障害になります。 気にしてくれているならば、気軽に声をかけてコミュニケーションを取ってください。 ○白杖を持って引っ張らないでください。 →白杖は情報収集手段です。そこからの情報が絶たれてしまうので「不安」になります。 ○後ろからどんどん押さないでください。 →前方の様子がよくわからないところに押し出されるので「怖く」なります。 ○黙って横や後ろからついて来ないでください。 →見えなくてもついて来られていることはわかるものです。黙ってついて来られるのは「嫌」です。 [View-Netのホームページ こんなことはしないで のところが直接開くQRコードを掲載] 冊子p22p23 障害って何だろう・障害ってどこにあるんだろう [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p22 ●本文: 社会に障害をなくす配慮のしくみや声かけの配慮があることで直子さんの生活から「障害」がなくなることがわかってもらえたと思います。では「障害」は見えない・見えにくい人など体に障害のある人だけに作りだされるもので、皆さんの周りにはないのでしょうか? ★イラスト お店の出入り口の前で楽しそうに立ち話をする三人の女子高生、その後ろにはお店を出ようとしている男性。出入り口がふさがれているので出るに出られない。男性は少し困惑している様子。 ●本文: お店を出入りする人が通りにくいという「障害」を作りだしています。自分たちの楽しいおしゃべりだけを考えるのではなく、周りの人に配慮して出入り口からはなれたところでおしゃべりをすれば「障害」はなくなります。 p23 ★上側のイラスト: おじいちゃんと食事をする幼児、幼児は高い椅子に座って食べている。 ●本文: 子ども用のいすをレストランが配慮し用意しています。これも社会にある障害をなくす配慮のひとつです。 ★下側のイラスト: 部活の遠征の荷物を持った高校生 遠征先の高校に向かっているが道に迷った。 高校生から歩いているおばちゃんの背中に向かって吹き出し: すみません、ABC高校はこっちですか。 そのおばちゃんは無視している、おばちゃんから心の声の吹き出し: めんどくさいよ その後ろなは犬の散歩をしながら歩いてくるおじさん。二人の様子に気づき ABC高校の方を指さしている。 ●本文: 「障害」は体に障害があってもなくても、だれにでも作りだされるだけでなく、利用しやすい道具や配慮によりなくせることもわかってもらえたと思います。 ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] 目が見えれば、からだの不自由がなければ、障害(バリア)に直面することはないのでしょうか。 「からだが不自由」なのかどうかに関係なく、社会のあり方によって障害ができたりなくなったりしていることに気づくために、ごく普通にある日常生活の場面を紹介しています。 [冊子掲載のイラストの解説] p22:他者への配慮がない行動が障害となり、店に出入りしにくい状況を作っている例です。 p23上:レストランの責任において障害をなくす製品(座面の高い椅子)を用意しているので、子どもも快適に食事ができる例です。 下:情報不足により困っているときに、人の配慮があるかないかで障害ができたりなくなったりする例です。 ===イラストの解説ここまで 健常者であっても「自分のからだの状況に合った使いやすいものがあること」や「周囲の配慮があること」で、障害はなくなることに気づいていただけたと思います。 「誰にでも障害はあることだ」といっても、からだが不自由な人には障害が多く、そうでない人には少ないという現実があるのは、なぜでしょうか。 それは健常者には、自分のからだの状況に合わせた社会の配慮が十分にあるからです。 例えば、街中にはたくさんの案内板があります。目の見える人はこのような設備を利用(設備に依存)して知りたい情報を入手できます。垂直移動設備としては階段があります。足を自由に動かせる人はこのような設備を利用(設備に依存)できるので、上の階に上がれます。 健常者は、情報入手をするために依存できるツールが、体を移動させるために依存できる設備が、十分にある。つまり十分な配慮が社会から提供されているので、障害がとても少ないのです。 一方、この「からだの状況」に当てはまらない人は、社会からの配慮を受けられず依存先がない・少ないのですから、障害が当たり前に多くなります。 ○ 製品や設備を作る人、サービス提供のしくみを作る人は、健常者だけが使えるものを作るのか、多様な人が使えるものを作るのか。 ○ 自分だけが楽だから自分は楽しいからと、周囲の人のことを考えない行動をしてしまうのか、周囲の人のことを考えて行動するのか。 このようなことで、人は障害を作ることもなくすこともできるのです。 一定の状況の人だけに配慮するのではなく、多様な状況の人に配慮された社会ができれば、誰にも障害がない共生社会ができると確信しています。 IBM サイトに掲載されていたコラムから抜粋 「自立」とは社会の中に「依存」先を増やすこと 熊谷晋一郎 准教授(東京大学先端科学技術研究センター 当事者研究分野 准教授、小児科医) (略) これを障がい(*)者にあてはめると、障がい者も依存先がとても少ない。ありとあらゆるものが健常者向けにできていて、建物にも地域社会にも依存できません。必然、近親者などに依存先が集中してしまいます。自立とは、その逆で依存先が広がっている状態です。つまり、障がい者の自立には、多くの依存先が必要なのです。 (略) 健常者に依存先が必要ないかというとそうではありません。健常者はすでに自身に見合った依存先が複数あり、自分では意識せず当然のようにそれを利用しているだけです。 いつでも利用できるトイレがたくさんある、地震などでエレベーターやエスカレーターが止まっても、避難できる非常階段がある、疲れたら腰掛けられるベンチがあるなど、社会は健常者にとって多くの依存先にあふれています。健常者が何もせずとも得られている恩恵を、障がい者は、享受できていません。 ただ、これはしばしば誤解されるのですが、「依存先を増やそう」というメッセージの宛先は、障害を持つ当事者ではありません。依存先は、障がい者本人が自助努力で増やすことのできないものです。自助努力だと勘違いすると、医学モデル的なメッセージになってしまう。「依存先を増やそう」というのは、あくまでも社会へのメッセージです。社会に依存先という選択肢をたくさん提供してもらわねばならないのです。そして社会は、私たち全員のことです。一部の障がい者のことでもなければ、健常者だけでもありません。 これはもちろん高齢者にもあてはまります。「年を取る」ということは、個人差はあるにせよ誰もが徐々に身体が不自由になり、心身ともに障害が生じていくという現実でもあります。世界で最初に超高齢社会に突入した日本だからこそ、社会がすべての人に対して依存先をどう提供できるか、皆さんと一緒に考えていければ幸いです。 障がい(*):医学モデルで障害を捉えたいときは平仮名で、社会モデルで障害を捉えたいときは漢字で表したいと個人的に思っています。なぜかというと、個人の中に悪いものが宿っているわけではなく、社会の側に障害があるのだと言いたいからです。 全文はこちらから [コラムの全文がダウンロードできるQRコードを掲載] 冊子p24p25 なにが「障害」になって、どうしたらなくなるの? [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから ●本文: (1)どんな「障害」があるのか (2)なぜ「障害」が作りだされてしまったのか (3)その「障害」をなくすにはどうすればよいか イラストを見て友達といっしょに考えてみてください。 [4つのシーン] ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] :グループ討議の提案 これら4つのシーンを使ってグループ討議をする時間をぜひとってください。正解があるわけではありません。これまでに考えてきたことを、具体的に活用してみる機会として提案しています。 社会が作り出している障害は何か、どうすればその障害をなくせるのかについて話し合い、そこから自分ができる具体的な行動を考えることで、みなさんが実際場面での応用ができるようになることを願っています。 シーンA:重い扉が閉まっていて開けられないために中に入れない [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p24 上側(シーンA) ★イラスト 大きな荷物を持っている少年、重くてふらふらと歩いている、ドアの前、ドアが閉まっている。そこに通りかかった人がいる。 ==========内容ここまで *着目点は「閉まっている重い扉(環境)」です。「両手が使えないこと(からだの状況)」ではありません。 まず、扉がどのようなら障害はなくなるのかを考えてみてください。自動ドアならいい、体で軽く押すことで開けられたらいいなど、様々な解決方法が考えられます。 次に周囲に目を向けてみてください。この場面を見ている両手が空いている人がいます。この人にできることを考えてみてください。そして、この人が見て見ぬふりをしたら、障害はどうなるかも考えてみてください。 シーンB:バリアフリー設備(点字ブロック)を利用している人が、そのまま進むと人にぶつかってしまう [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p24 下側(シーンB) ★イラスト 誘導ブロックを何の不安もなく堂々と歩いている直子さん。その先に誘導ブロックの上に大きな荷物を置いてスマホを見ている男子高校生。そこに通りかかった人がいる。 ==========内容ここまで *着目点は「バリアフリー設備」です。「この人の目が見えないこと」ではありません。 まず、点字ブロック上の状況が、どうなら障害はなくなるのかを考えてみてください。この男子生徒は点字ブロックが何のためのバリアフリー設備なのかを知らないために、結果的に障害を作っているのかも知れません。あるいは、点字ブロックのことは知っていても、見えない人なんか来ないだろうと自分優先の考えで障害を作っているのかも知れません。 原因の洗い出しができたら解決方法を考えてみてください。 次に周囲に目を向けてみると、目で見て状況を把握している人がいます。この人にできることを考えてみてください。 シーンC:高いところにある本がとれない [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p25 上側(シーンC) ★イラスト 図書館。一人の男性が図書を探していたら、すぐ横に男の子が来て一番上の段の本を取りたくて手を伸ばしている。でもその手がとどかない。その男性には踏み台が見えているが男の子からは見えない。 ==========内容ここまで *着目点は「高いところに本があること」です。「この人の背が低いこと」ではありません。 まず、環境(本の収納状況)に着目して障害の原因を洗い出し、解決法を考えてみてください。 次に周囲に目を向けると、背の高い人がいます。この人にできることを考えてみてください。 シーンD:スペースがなくてエレベーターに乗れない [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから p25 下側(シーンD) ★イラスト 階段とエレベーターが横並びである。エレベーターには子どもも含めて一見健康そうな人が4人乗っている。ドアが開いたら車いす使用者がエレベーターに乗るために待っていた。エレベータには車いすが楽に入れるだけのスペースがない。 ==========内容ここまで *この例は、「人の意識」について深く考えてみるためのものです。垂直移動に関して、円滑な移動を妨げられている状況があることを示しています。 環境に着目して、ここにはどんな垂直移動設備があってそれぞれ「どんな人が依存できる設備なのか」を考えてみると、歩ける人は階段を使えばいいという意見が出てくると思います。 ある意味その通りですが、単純にそのように決めていいのかと、もう一歩考えを進めてみてください。 見た目でわからないからだの状況の人もいるかも知れません。内臓の病気の人や今たまたま具合が悪い人など、様々な状況のある人がいる可能性があります。このようなことから、ここにいる人たちでコミュニケーションをとり、それぞれのニーズを考えてバランスをとることがとても大切になってくるのです。 環境に多様な人への配慮があることで、障害は劇的になくなります。しかしその配慮が現時点では乏しいことや、環境整備だけでは取り除けない障害もどうしても出てきます。ですから「人と人とのかかわり」も重要なポイントになってくるのです。 ★障害は一人一人が作ることもなくすこともできる これまでこの冊子では障害(バリア)が作られる原因とその解決法について様々な例を通して考えてきました。 そして、社会とのかかわりの中で、誰にでも障害があったりなかったりすることにも気づかれたと思います。 @ 健常者も含めた「人のからだの状況(使用言語・得意不得意・体格 等も含む)」に合わせた使いやすい設備・道具・情報サービスといった社会のしくみがある A 人の意識が他者との違いを理解し、認め合い、互いに協力・配慮しあうことが社会の当たり前になっている 社会のしくみを作るのは「人」です。多様な人が暮らしやすい社会を作るのか、一定のからだの状況の人(健常者)だけが暮らしやすい社会を作るのかは、全て人の意識に起因します。一人一人が多様な他者を意識することで、誰もが障害のない共生社会ができると言っても過言ではありません。障害は一人一人が作ることもなくすこともできるのです。 笑顔の直子さんから吹き出し: あなたは障害をなくす人になりますか? それとも作る人になりますか? 冊子p26p27 まとめのメッセージ [障害理解のための冊子の該当ページを縮小して掲載] ==========その内容ここから ★2ページ見開きのイラスト 町の屋外カフェ。屋根はテンと。背景は木々の緑。 いろいろな人たちがそれぞれくつろいでいる。 一番左側にはウエイターのお兄さんがお盆に飲み物を乗せて運んでいる。 その右隣に盲導犬を持つお姉さん、その向かい側に客のお兄さん お兄さんから吹き出し: そうか、いろいろな人たちへの配慮なんだよな。 見開きページ真ん中の手前の大きなテーブルに 赤ちゃんを見つめてジュースをあげているお父さん、赤ちゃんはベビーカーに乗っている。 お父さんから吹き出し: やっぱりみんな個性がちがうからいいんだよな。 その隣に座ってそれを見ている直子さん 直子さんから吹き出し: ステキな人になってね。 同じテーブルにはおじいちゃんと女子高生も座っている。ここのカフェの全体の雰囲気を感じ取っている様子。 このテーブルに着こうとしている松葉杖のお兄さん、そのお兄さんに椅子を持ってきているお兄さん、 お兄さんから吹き出し: おれ、いきなりはできないし、まずは身近な人からだな。 奥側のテーブルに 外国人らしき人も含めて4人の若者たちが楽しげに話している 黒人女性、帽子をかぶったお兄ちゃん、女性、金髪の男性 女性から吹き出し: 仲間はずれはだれだってイヤだよね。 帽子のお兄ちゃんから吹き出し: 一人ひとりの意識で変わるんだよな。 ページ右側に妊婦さん、 ページ左側に書かれている盲導犬を持つお姉さんに手を振って「こっちよ!」と合図している感じ。 手前のテーブルには車いすに座った人がお茶を飲みながら本を読んでいる。 ●見開きページ下側に一行で本文: いろいろなちがいのある人がいて、いっしょに楽しく暮らせる社会をみんなでつくっていきませんか! ==========内容ここまで [以下、解説書掲載内容] 見開き全体を使って、多様な人たちが「今から自分にできること」に気づき始めている場面を表現しています。 共生社会は特定の人だけが頑張ってできるものではなく、この場面の中にいる人のように個々の気づきが積み重ねられて、最終的には社会全体の人々の意識で作られていきます。 「あなたの気づきと行動でだれもがともに暮らせる社会」ができるのです。 ★社会モデルは普遍的 従来、女性は社会で活躍する人ではありませんでしたが、今では活躍するのが当たり前となっています。女性のからだの状況が男性と同じような体力・筋力へと変わったわけではないのに、活躍できるようになったのはなぜでしょう。 人の意識が、女性が活躍して当たり前となってきたことで、女性にとって仕事がしやすい社会の配慮が増えて、女性というからだ「ありのまま」で活躍できるようになったのです。今、ここであげた女性が活躍できるようになった理由は、からだの不自由な人が社会で活躍できる要素と全く同じです。 大きく文化や習慣の違う外国人や異なる考えをもつ人と共生する社会について考えるときにも、人の意識も含めてどんな障害(バリア)によって共生が阻まれているのか原因を洗い出し、それをなくす方法を考えていくはずです。まさに社会モデルそのものです。 ★みんなちがって当たり前(身近な視点から) 人には相手の違いをヘンとして排除の差別をしたり、劣ったかわいそうなこととして哀れみの差別をしたりする感情があると思われます。しかし、人は理性で考えることのできる唯一の動物であることも確かです。 世界には何十億人もの人がいますが、誰一人として同じ人はいません。「みんなちがって当たり前」です。 しかし、現実の社会では多様性(違いのあること)は尊重されず、ある一定以上の能力があり自分ひとりでできなければいけないという能力主義で判断されてしまうことがほとんどです。 そのような中で、「支援(手助け)を求めること」は「迷惑をかけること」と思い込んでいる人が多くいます。 果たして支援を求めることは迷惑をかけることなのでしょうか。 支援を求めるときとはどんなときか考えてみると、それは障害(バリア)があるときです。支援を求めることは、周りの人と一緒に障害の原因を明らかにして、その解決法を考え障害をなくす行動です。それと同時に、そもそもその障害を作らないようにするにはどうすればいいのかまで、思考が広がっていきます。これらはそこに関わった双方の人たちが、障害をなくす行動(Proactive Actionプロアクティブな行動)をとることを示しています。あえて大げさな言い方をすれば、互いの小さな行動が、障害の除去に貢献し、ひいては社会の変革に参加することができたとも言えるのです。※冊子p14p15の引用文「6.原因の解決:反応ではなく、プロアクティブに行動を起こす」をみてください。 一方、迷惑は、ごみのポイ捨てや歩道上の駐輪など、他者を顧みない自己中心的な行動のことです。他者の権利を侵害するだけでなく、社会全体の秩序を乱すことにも繋がります。これは障害を作る行為です。 「支援を求めること」と「迷惑をかけること」は明確に区別して考えることが必要です。みんながちがっていていい。支援を求めていいのです。皆さんの身近なところからこの空気感をぜひ作ってください。 ★どうしたら障害をなくす人になれるの? 誰もがいきなり大きなことはできなくて当たり前です。 児童・生徒の皆さんには、まずは身近な小さな社会(家庭・学校)の中にある障害(バリア)を互いの配慮でなくすことから始めてみることをお勧めします。互いの配慮がある空間ができるのですから、その延長線上にはいじめや仲間外れもなくなっていくのだと思います。 このような身近な実践経験のある人は、将来、社会に出たときにも障害を作らない、あったらなくす人になっていけると確信しています。 裏表紙の直子さんの「いろいろな人とともに暮らせるステキな心をもった人になってね!」というメッセージは、この冊子を目にしてくれた児童・生徒のみなさんが「社会の障害をなくす人になってくれる」と信じ、その願いを込めた言葉です。 トピック記事 【 スポーツ・余暇活動 】 ★スポーツ 視覚障害者同士、または視覚障害者と晴眼者が一緒に楽しめるように工夫されています。 視覚障害者は音を手がかりにプレイするため、試合中は静かにしているのがエチケットになっています。 例:ゴールボール、サッカー、サウンドテーブルテニス(卓球)、競泳、柔道、陸上競技(マラソンなど)、自転車など 介助者とマラソンをする写真 ★余暇活動 音楽活動を趣味としている人がとても多くいます。 手先の感覚を使ってできる折り紙や手芸を楽しんでいる人もいます。 パソコンやスマホでブラウジングしている人も多いです。 バンド演奏をしている写真 [View-Netのホームページ スポーツ・余暇活動 のところが直接開くQRコードを掲載] おわりに 私たちは、「互いの違いを認め合い、相手の人権を尊重し、多くの人たちがいろいろな人と共生できる素敵な人になってほしい」との願いで講座を実施するとともに、この冊子も作成いたしました。 不十分なところも多くあると思います。引き続き実践を重ねる中で、さらに充実させていきたいと思います。忌憚のないご意見を賜れば幸いです。 イラスト ページ上半分弱にすがすがしい顔をした直子さんのバストショット、読者に手を振っている。 ○直子さんから吹き出し: いろいろな人とともに暮らせるステキな心をもった人になってね! この冊子は「NHK歳末たすけあい配分金」「あさひふれあい助成金」の支援を受けて作成いたしました。 制作 : 特定非営利活動法人 神奈川県視覚障害者情報雇用福祉ネットワーク(略称View-Net神奈川) ホームページ : https://www.view-net.org/ 制作協力 : 創造集団 440Hz・日本点字図書館 イラスト作成 : 山本菜々子 ※この冊子の文章・イラストの著作権は 特定非営利活動法人 神奈川県視覚障害者情報雇用福祉ネットワークに帰属します。 これらの資料もご活用下さい *法人作成 「障害理解のための動画」11分30秒 法人webページ *福祉教育コーナー *福祉教育活動報告 [法人webページのトップページ、障害理解のための動画、福祉教育コーナー、福祉教育活動報告に直接入っていけるようにQRコードを4つ掲載] 直子さんとその隣に囲み記事: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ 宣言 より この偉大な共同の旅に乗り出すにあたり、我々は 誰も取り残されないこと を誓う。 人々の尊厳は基本的なものであるとの認識の下に、目標とターゲットがすべての国、すべての人々及び社会のすべての部分で満たされることを望む。・・・ [SDGsのロゴ]