1. 実施会場: 慶應義塾大学日吉キャンパス独立館
2. 実施日時: 平成24年 1月14日 10:00~12:30
3. 対象者: 福祉教育に関心がある教員・施設職員・障害当事者等
4. 内容
(1) 理事長あいさつ
○個人的にではなく、組織として取り組む体制を構築した。
○当事者講師の発言はきわめて責任が重く、受講者に大きな影響を与えることになるので当事者講師にはスキルが必要。
○アイマスク体験は、やり方によって、負の要素も秘めている。
○人格を認め合いながら社会形成をしていくということを子どもたちにどう伝えていくのかについて研究研修を重ねている。
→教員・社協・当事者の連係が不可欠。
(2) 小学校実践報告
○事前のイメージ
・点字ブロックの目的もわからなかった
・たいへんそう、かわいそう、外出・仕事もできないのではないか
○事前調べ学習
・点字ブロック
・用具
○視覚以外の感覚を使ってみた
・チョークで書く音を聞いた
・窓をあけて風の感覚、外の音を聞いてみた
○当事者との交流当日
・点字を書く場面、道具を使う場面をはじめて見た
・意思表示の方法(聴覚・触覚にうったえる方法)で表現することを学んだ
○事後学習
・人だからできる、人だから気づけることを進んでしたい
・関わることに自信が持てた
○社協は
・相談しやすい雰囲気作りをする。
・先生からよく話を引き出す。
・その場限りのものにならないよう、日常の学級の中でも思いやりの心を大切にしていくなど、後に繋がるものとなるようフォローしていきたい。
・本物の視覚障害者を一度でも誘導していると、その後、出会った視覚障害者に声をかけやすくなるのではないか。
(3) 中学校からの報告
○一年生の総合の時間の体験学習に福祉を10時間分、位置づけている。
○ノーマライゼーションの理解、実体験から学ぶ。
○事前学習(先生からの講義と生徒自身の調べ学習)
○障害当事者との交流
○事後学習(振り返りとまとめ発表)
→新聞づくり(どんな体験をして、どんなことが大切だとわかったのか)
○社協として、学校・当事者の両者が最大限に効果的な講座ができるよう、お互いの理解促進にも勤めている。
(4) 中野泰志、慶應義塾大学日吉心理学教室教授講演
○自分の体験を通して感じたこと
→当事者に聞くことが大切。
○特別支援教育は子ども本人と家族にだけ努力を強いて、それでよしとすべきものだろうか。
→障害のことを知らない人を教育しなければ特別支援教育は成り立たない。
○福祉教育の中で大切なのは、いかにリアル感を持っていろいろな人に接し、自分は何をしなければならないかを考えることが大切。
→この社会はいろいろな人で構成されている。障害者も高齢者も人であり、同じ社会の一員。
→勤勉な人も怠け者もいる。いろいろな人たちがいていいんだということを受け入れられる社会を作ることが福祉の社会。
→努力することが容易な人も能力的に困難な人もいるる。
→お金を儲けた人がそのお金の一部を配分してもいいといった太っ腹な気持ちを持てる人を育てなければ。
○当事者を呼んだときに「頑張っている障害者がいいんだ」という方向に持って行かないように。
→「いろんな人がいる中に障害者がいる」という方向に持って行く。
★なぜ福祉教育が必要か
○自分も近い将来、高齢者になり障害者になる。
→人ごとでなく自分のこととしてとらえる。
○障害者権利条約批准のための法改正により、障害児の修学が地域の学校通常学級が原則になる。
→だれもが学べる学校づくりが必要。
★福祉教育をすすめていくためには
①教職員を変えること
→教員が理解していなかったり、本当はめんどうだと思っていたら成功しない。
→教員が偏見を持っていれば子どもたちもそれを受け継ぐ(表情・態度で伝わる)。
②心を伝えていく。障害を通して何を知ってほしいかをしっかり伝える。
→具体的には技術を通して伝えることが多いが、技術が本当に伝えたいことではない。
③様々な人がいっしょに暮らしていける社会をみんなで考えようという態度を形成する。
→その場限りの講座で終わりにならないよう、ずっと思い続けていられることが大切。そこに何らかの形で自分が関わり続けていきたいと思う気持ちを子どもたちに残していけるかが大切。
今ここでの成果だけを求めない方がいいのかも知れない。
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これらのことを根底に当事者の方の話を聞くことが大切。
(5) 閉会あいさつ
○ここ30年で、ずいぶん変わってきた、でもまだこれしか変わっていないという感がある。
(6)自由討議
★参加者の発言
○見えなくてできる体験として、おりがみ・鍵盤楽器を実践しているが、他に何かあったら教えてほしい。
○アイマスク歩行を先生にまず体験してもらい、納得してもらった上で実践している。
→「怖かったらやめていい、無理はしないで」と声かけしてやっている。
→多くの見守りをつけてくれる学校だけやっている。
→こんなに困っているんだという子どもたちの感想が出る。
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★発言を受けてView-Netのアイマスク体験のスタンスを説明
○アイマスク体験というと歩行をすることが多くなっているが、これは視覚障害者の歩行訓練をする者たちが周囲の人たちの援助を視覚障害者が受けられる環境を作ろうと、見える人たちに啓発活動を始めた時期と、「いわゆる福祉教育」が始められた時期が同時期であったために、それがそのままそっくり採用されてきてしまったのではないかと考えられる。訓練士達がアイマスク歩行を何時間も体験するという意味は、視覚情報がないと歩行にどんな情報の取り方をして、どんな情報が得られないのかを知って、実際に視覚障害者が歩くときにどう情報をとっていったらいいかをアドバイスできるようになるためのことであり、視覚障害者の歩行訓練をする者でない人が、そのようなことをする必要は全くない。
アイマスク歩行をすることは視覚障害を理解することに繋がらないと思う。
アイマスク歩行で視覚障害者理解をするというのは、訓練をする者が指導をするために歩行環境を理解するために行う者であり、指導員ではない人がすることではない。
福祉教育で求められているのは指導者になることではないので、視覚以外の感覚が使えるという理解に繋がる体験の方が意味深いと考えられる。
→これには、資格遮断をしても今持っている他の能力を使ってできるという達成感を得ることにより、万が一視覚障害を将来負ったときにも「できるんだ」という自信にも繋がることに繋がる。
これがアイマスクで「怖かった・何もできなかった」となると、見えなくなったときの自分を否定することに繋がる恐れがある。
★これらの発言の後で参加者から出た発言
○今、街で見かけた視覚障害者に声をかけられるようになるためには歩行も必要なのではないか。そして、将来のためには視覚以外でできる体験も必要なのではないか。
★中野先生のまとめ
○視覚障害者の理解をしようとしたときに視覚障害当事者を呼ばないですすめることはやめてください。
→当事者以外の人が理解推進することはできない。しかし、当事者も全ての当事者のことがわかっているかというとそうではない。
○当事者自身も、いろいろな当事者がいるということを知って、それを前提に話をしなければならない。
○当事者は、「①福祉教育を通じて何を理解してほしいか、②どう視覚障害を理解してほしいか」を考えて話をする必要がある。
○アイマスクを利用するときには、「アイマスクを利用してこういうことを伝えたいから」ということを明確に打ち出してやる。
○子どものことをよく知っている教員と視覚障害についてよく知っている当事者がよく話し合ってプログラム作成をする。
→パッケージを持ってきてうまくいくのではない。事前の議論が大切な体験を生む。